銃乱射に便乗するトランプはテロリストの思うつぼ
そもそも、オーランドの銃乱射事件はアメリカ国内から生まれた悲劇だということをすぐに認識できなかった時点で、トランプを大統領にするのは危険だ。長年アメリカ国内で憎悪や差別の標的になってきたLGBT(性的少数者)層が、いとも簡単に売買される銃によって虐殺の犠牲になったというのが、今回の事件の本質だ。
【参考記事】銃乱射はテロか憎悪か、思い当たり過ぎるフロリダの闇
マティーンはまるで安物のスーツを羽織るかのように、テロ組織が掲げる信条や主義主張を身にまとった。テロとは無関係のイスラム教の価値観をテロ行為の正当化に結び付けようとするさまは、事件に対するトランプの反応がアメリカの価値観に反しているのと同じだ。事件はアメリカ自身が抱える問題であり「他者」を責められるような次元のものではないということに気が付かなければ、問題の解決に向けた取り組みは始まらない。
ビンラディンやイスラム過激派にとっては、何と輝かしい勝利だろう。超大国アメリカの勝利する唯一の方法はアメリカを国内から弱らせていくことだが、トランプが大統領になればそれが可能となる。突出した洞察力を持つビンラディンは、どんなに強力なテロ組織や軍事力をもってしてもアメリカを倒すことはできないとわかっていた。打倒するには、アメリカの自滅しかないことも。今年の大統領選の結果によっては、ビンラディンの見解が正しかったどうかが試される展開もあるかもしれない。