モハメド・アリの葬儀に出る大物イスラム政治指導者とは
Action Images / Sporting Pictures/File Photo
<ボクシング・チャンピオンであると同時にイスラム教徒で人権活動家だったモハメド・アリは、紛争と差別に苦しむイスラム諸国共通の英雄でもあった>
ボクサーのモハメド・アリが6月3日に亡くなった。アリはイスラム教に改宗した最も著名なアメリカ人アスリートとして、イスラム教徒のファンたちの大きな共感を呼んだ。したがって、パキスタンからバングラデシュ、チェチェンにいたるイスラム世界の政治指導者たちがアリの死を公然と悼んだとしても、驚くには値しない。
なかでも2人のイスラム国家元首──ヨルダン国王のアブドラ2世とトルコ大統領のレジェップ・タイップ・エルドアンは、イスラム世界におけるアリの重要性を示すため、6月10日にアリの故郷であるケンタッキー州ルイビルで行われる葬儀で弔辞を述べることになっていると、遺族のスポークスパーソンであるボブ・ガンネルは言う。葬儀はあらゆる宗教・宗派の違いを超えたものになる。
アリは、ボクシングで3度世界王者の座を奪う間にも努めてアフリカや中東の国々を訪れて民族主義や反植民地主義の指導者たちに親愛の情を表し、世界中のアリ・ファンのイスラム教徒たちに愛された。
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初めて抱きしめてくれた白人指導者
アリのトルコとの結びつきは、1976年10月のイスタンブール訪問にさかのぼる。この訪問はあまり知られていないが、アリはそのとき、のちのトルコ首相ネジメッティン・エルバカンに面会している。
エルバカンはイスラム主義者でのちに政治活動を禁じられた人物だ。今の大統領のエルドアンはその門弟で、公正発展党(AKP)を設立したのちに、2003年にトルコ首相、2014年から現職にある。
アリは、イスタンブールにある「スルタンアフメト・モスク」(通称ブルーモスク)でエルバカンとともに祈りをささげたことがある。伝えられるところによると、アリはその出来事について「白人の指導者がわたしを抱きしめてくれたのは初めてだった」と語ったという。
アリはトルコ滞在2日目に、ボクシングから引退して「全精力をイスラム信仰の布教に注ぐ」と宣言した。実際にアリが引退したのは、それから数年リングで戦った後のことだったが。
トルコ政府の古参議員はアリとの思い出を懐かしく振り返っており、エルドアンもアリについてて以下のツイートを投稿している。
May Allah have mercy on Muhammad Ali, whose courage, conviction and determination inspired all of humanity.
— Recep Tayyip Erdo?an (@RT_Erdogan) 2016年6月4日
またアフメット・ダウトオール前首相はトルコ語で次のようにツイートした。「拳ではなく、心と魂で闘った人権の擁護者モハメド・アリを、アラーのご慈悲が抱擁せんことを」
アリの政治活動はイラン・イラク戦争にも及んだ。1980~88年にかけて、近代史上、最も凄惨な国境紛争に数えられる戦いを繰り広げた両国を、アリは1993年に訪問。双方の戦争捕虜の解放が確実になされるよう尽力した。国営イラン通信(IRNA)は6月4日、アリが宗教的に意義のある土地を訪問したり、イラン当局者たちと会談したりした際の写真を公開した。