ロシアがドイツに仕掛けるハイブリッド戦争
Sergei Karpukhin-REUTERS
<ロシアが今、ドイツに揺さぶりをかけている。ウクライナ東部で親ロ派を煽ったときのようにロシア系ドイツ人を煽動し、後にでっち上げとわかったロシア系ドイツ人少女の集団レイプ事件の背後にいたのもロシアだ。ドイツも遅ればせながら対抗策をとり始めた>
今いくつもの危機に見舞われている欧州大陸にもう一つ、深刻な脅威が浮上している。ロシアが、ドイツを傷つけ不安定化させようと積極的に動いているのだ。
ロシアのドイツに対する隠密活動は、軍事力と世論操作などの非軍事手段を併せたウラジーミル・プーチン大統領の「ハイブリッド戦争」の一環だ。標的がEU(欧州連合)のリーダーであるドイツだというのは由々しきことだ。内外で数々の安全保障上の脅威に直面している欧州の団結を維持できるのはドイツだけだ。
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ロシアは、ウクライナのクリミア半島を併合した2年前のウクライナ危機の間、ドイツなど欧州諸国でのスパイ活動を強化してきた。ドイツ国内の治安機関である連邦憲法擁護庁(BfV)によると、ロシアは、旧ソ連の秘密警察KGBがかつて用いた破壊活動戦術である「不安定化」と「偽情報」の2つを展開している。
NATO戦略的通信研究センター(StratCom COE)を指揮するジャニス・サーツによると、ロシアはこうした戦術を使って意図的にドイツの政情不安をかき立てており、その最終目標はアンゲラ・メルケル政権の転覆だという。
政治団体が突如出現
例えば2016年2月、ドイツの国内諜報機関と国外諜報機関の両トップは、ロシアがドイツに住むロシア人たちの「高い動員可能性」を利用する可能性があると警告した。ロシアは、そうした人々に働きかけて、破壊的な街頭デモを行わせようとしている。
つい1カ月前には、「ロシア系ドイツ人国際会議」(International Congress of the Russo-Germans)を名乗る団体が、メルケル政権に対するデモを行った。それまで知られていなかった政治団体が突如表れるのは、2014年にウクライナからの分離独立とロシアへの編入を求めるウクライナ東部でロシアが暗躍していたときの状況と似ている。
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ウクライナにおいてロシアは、世論を計画的に操作し、「ウクライナ政府は国民の利益を保護できない」というロシア側の物語でウクライナ世論を誘導しようとした。ロシアがドイツで同様の扇動活動を行っているのは極めて憂慮すべきことだ。
ロシアはまた、ドイツ社会にある難民問題をめぐる対立を利用して利用して世論の分断を図っている。移民の流入によって政情は不安定化し治安が悪くなるという話を流布し、政府にはもはや国民の安全を保障する力がないと思わせようとしているのだ。