最新記事

米大統領選

「トランプ大学」詐欺訴訟でトランプに不利な判断

2016年5月30日(月)19時30分
スタブ・ジブ

Jonathan Ernst-REUTERS

<反トランプ派が指摘を続けていたのにこれまで大きな争点にならなかった「トランプ大学」詐欺疑惑。先週末、集団訴訟の判事が6月2日までに売り込みマニュアルも含む「大学」の内部書類の公開をトランプ側に命じたことで、不正の証拠が晒されてしまう可能性が出てきた>

 米連邦地裁のゴンザロ・クリエル判事は27日、米紙ワシントンポストの要請を受けて、カリフォルニア州で詐欺罪で集団訴訟を受けている「トランプ大学」の内部文書を公開するよう命じた。

 トランプ大学は、不動産投資を指南することを売りにドナルド・トランプが投資、設立し、2005年~11年にかけて運営されていた営利目的の教育機関。そこで授業料や教材費をだまし取られたというのが原告の訴えだ。

 今回公開の対象となるのは、不動産投資に関するセミナーを売り込むためのマニュアルや経営戦略などを記録した1000ページ相当の内部文書のうち、個人情報を除いた部分。公開期限は6月2日とされた。

【参考記事】ヒラリー対トランプの「ゴシップ合戦」に突入した大統領選

 クリエル判事は公開を命じた理由として、トランプが共和党の大統領選候補の座をほぼ確実にしたことでこの件についても有権者の関心が高まっていることを挙げた。またトランプが一連の裁判を公然と批判し、司法制度を侮辱してきたことも理由に挙げた。

 トランプは、同じ日にカリフォルニア州サンディエゴで開かれた選挙集会で、裁判とクリエル判事について愚痴をまくしたてた。「裁判沙汰にすべきじゃない。この訴訟は略式判決で容易に却下される程度のものだし、誰もがそう言っている。判事はドナルド・トランプを毛嫌いしている。とにかく憎悪に満ちている。彼の名はゴンザロ・クリエル」

12分間も愚痴り続けたトランプ

「あの判事はきっとメキシコ系だ。そのこと自体は素晴らしいし、問題は全然ない。メキシコ人は仕事さえ与えれば、最終的にドナルド・トランプが大好きになる」

 トランプはこの問題について12分間しゃべり続けた。米メディアのポリティコによると、トランプは「司法によって不当に追い込まれて」おり「非常に不公平な扱いを受けている」と主張。自分が「不法移民を国外退去にする」と主張しているから、判事は自分に偏見を持っているのだと非難した。

【参考記事】トランプ旋風を生んだ低俗リアリティ番組「アプレンティス」

 カリフォルニア州で行われるこの連邦訴訟は、大統領選の本選が終わってすぐの11月28日に初公判が開かれる予定だ。

 だが、現在閉鎖中のトランプ大学を待ち構える訴訟はこれだけではない。2013年にはニューヨーク州のエリック・シュナイダーマン司法長官が、トランプ大学は正式な認可を受けておらず学位を与える資格もないのに「大学」の名称を使用して受講者を欺き、5000人以上から受講料をだまし取ったとして、詐欺罪で訴追した。被害総額は4000万ドルという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中