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世界経済サミット首脳宣言公表、「新たな危機」回避へ政策総動員を確認
現状が危機に当たるとの認識は一致せず、抽象的な内容に
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5月27日、主要7カ国(G7)は、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言を公表した。世界経済の将来的な下方リスクに警戒感を示すとともに、全ての政策手段を総動員することを確認した。写真はワーキングセッションに参加する各国首脳。代表撮影(2016年 ロイター)
主要7カ国(G7)は27日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言を公表した。世界経済の将来的な下方リスクに警戒感を示すとともに、全ての政策手段を総動員することを確認した。経済の現状が「危機」かどうかをめぐっては、「新たな危機に陥ることを回避する」とし、現在は危機的状況ではないとの見方をにじませた。
首脳宣言では「G7伊勢志摩経済イニシアティブ」を打ち出し、経済分野での諸課題に共同で対処することで一致。世界経済の成長を「喫緊の優先事項」と位置付け、各国の状況を考慮しつつ、成長実現へ「均衡ある政策の組み合わせを用いる」とした。
安倍晋三首相が26日の討議で、コモディティ価格の下落などがリーマン・ショック級とする資料を各国首脳に提示したが「クライシスとまで言うのはいかがなものか」との異論もあり、世界経済の現状認識に注目が集まっていた。
首脳宣言は、世界経済の回復は続いているが「下方リスクが高まっている」とする一方、「新たな危機に陥ることを回避するため、経済の強じん性を強化してきている」とし、現在の状況が危機に当たるとの認識では一致しなかった。
焦点の1つだった財政出動については、機動的な財政戦略の実施と構造政策を果断に進めるとしたうえで、「G7が協力して取り組みを強化することの重要性について合意」した。
為替に関しては、過去のG7やG20の声明を踏襲するかたちで、「為替レートの過度の変動が経済に悪影響を与える」と指摘。為替レートを目的としないことに加え、すべての国が通貨の競争的な切り下げを回避することの重要性を強調した。
また、地政学紛争やテロ、難民問題と世界経済との関連にも言及し、こうした問題は「世界経済を複雑化させている」とした。
さらに6月の国民投票で結果が決まる英国の欧州共同体(EU)からの離脱問題では、離脱すれば世界貿易や投資、雇用拡大の流れに逆行し、世界経済にとって深刻なリスクになると明記した。
(梅川崇 編集:田巻一彦)
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