オバマ広島訪問より大切なものがある
Issei Kato-Reuters
<アメリカ大統領の被爆地訪問は歴史的な行為だが、そのために直前に行われる伊勢志摩サミットの議論がかすんではならない>
現職の米大統領は、広島に行くべきか──この問いは政治面で非常に微妙な問題だ。
米ホワイトハウスは先週、オバマ大統領が自身にとって最後のG7となる伊勢志摩サミットへの出席に合わせ、広島を訪問すると発表した。安倍首相も同行する。
先月、ケリー米国務長官がG7外相会議で広島を訪れた際、広島平和記念資料館に足を運んだ。以来、オバマが広島を訪問するかどうかが注目されていた。
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オバマにとって広島訪問は、核兵器廃絶に向けた長年の取り組みを示すことになる。彼は09年、プラハで行った演説で「核なき世界」の実現を高らかに呼び掛けた。
その一方で広島、そして長崎への原爆投下は、果たして正当化できるのかという問題がある。「オバマは広島を訪れるべきだ」と「訪れるべきではない」という相反する意見には、それぞれを強く支持する材料をいくらでも集められる。
だが、ともかくオバマは広島へ行くことにした。オバマの広島訪問から予期すべきこと、予期すべきではないことは、それぞれ何だろう。
謝罪はしない
まず日米両国は、オバマの広島訪問は過去と同じくらい、未来に対して意義があると訴えるだろう。
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オバマと安倍が共に広島を訪れれば、核兵器廃絶という目標に両国が精力的に取り組んでいるという強いメッセージになる。さらに、北朝鮮が防衛目的と称して核兵器開発を継続している時期に、両首脳が核拡散防止を働き掛けていると訴えることにもなる。
第2にオバマは、広島を訪問することで米大統領が原爆投下について謝罪した、と受け取られる発言は慎重に避けるだろう。しかし日本では、オバマが広島を訪れること自体、原爆が引き起こした恐怖と悲惨さを米大統領が認め、礼節を持ってその事実を思い起こしたと受け止められる。いずれにせよ、オバマの広島訪問は、日米関係にとって間違いなくプラスになる。
だが日米両国が考えるべきなのは、各国首脳が伊勢志摩サミットで話し合う世界的な議題の中に、オバマの広島訪問をどう位置付けるかだ。ケリーが原爆資料館と平和記念公園を訪れたのは、外相会議が終わった後だった。一般の関心は、各国外相の合意内容より、ケリーの広島訪問に集まった。