日本企業「稼ぐ力」に円高・資源安の試練、減益下での先行投資が課題
円高のマイナス影響は輸出企業だけでなく、消費にも暗い影を落としている。大手百貨店4社が2日に発表した4月の売上高(速報値)は、全社が前年実績を下回った。円高・株安が訪日外国人による免税売り上げや富裕層の消費を直撃した格好だ。三越伊勢丹ホールディングス<3099.T>の大西洋社長は11日の会見で、足元の円高について「インバウンドに影響ある」と指摘。「客単価は30%下がっている。中国の課税強化と円高、リピーターの購買額が落ちているので、この下落はずっと続くだろう」と厳しい見通しを示した。
意思を込めた減益
外部環境は厳しい状況にあるが、今回の決算ではリーマンショック後のように「守り」一色というわけではない。成長投資に二の足を踏むことは競争からの脱落を意味する。今期減収減益予想のパナソニック<6752.T>の津賀一宏社長は「いったん減益になったとしても、将来の売り上げ・利益につながる先行投資を実施する。いわば意思を込めた減益だ」と強調した。トヨタも今期の研究開発費、設備投資を前年よりも積み増す計画だ。
トヨタの伊地知隆彦副社長はリーマンショック前に過去最高の収益を上げた2008年3月期と今期予想を比較し、当時の方が円安でそのプラスの影響が1.2━1.4兆円に上るにもかかわらず、今期は当時から5700億円のマイナスにとどまっていることから「収益体質は当時から7000━8000億円上がっている。リーマンショック以降に積み上げてきた取り組みの成果は出ている」と強調する。
資源価格の低迷で前期に創業以来の赤字に追い込まれた三菱商事<8058.T>。垣内威彦社長は4月26日、ロイターとのインタビューで「これからは(資源価格が)動いたとしてもマネージできるように資源と非資源のポートフォリオのバランスを再調整したい」と述べ、経営資源の大半を非資源分野に投入する考えを示した。3年程度は資源事業の資産を増やさずに、商品市況に左右されない経営体質への転換を急ぐ。大口損失を一掃した今期はV字回復を見込んでいる。