最新記事

アジア

沖ノ鳥島問題で露呈した日本と中国の共通点

台湾の漁船拿捕をきっかけに「島か岩か」問題が再燃 日本の主張は南シナ海での中国にそっくり

2016年5月12日(木)18時00分
シャノン・ティエジー

島か岩か 沖ノ鳥島は満潮時には人工物の消波ブロックが海面上に顔をのぞかせる程度 Issei Kato-REUTERS

 アジアの海洋にまた1つ、争いの火種ができた。日本最南端の沖ノ鳥島(東京都)だ。

 台湾と日本は今、この島――というよりは「環礁」――をめぐって外交論争を繰り広げている。実際のところ、沖ノ鳥島が島なのか、単なる岩なのかが対立の焦点だ。

 沖ノ鳥島は居住者のいない岩礁で、満潮時には保全のための消波ブロックが海面上に顔をのぞかせる程度になってしまう。外交専門誌フォーリン・ポリシーは満潮時の面積を「キングサイズのベッド2台分程度」としている。それでも日本はここを「島」だと主張し、台湾(と中国と韓国)は違うと訴えている。

【参考記事】南シナ海、強引に国際秩序を変えようとする中国

 これは定義だけの問題ではない。島であれば、国際法の下で200カイリの排他的経済水域(EEZ)が認められるからだ。沖ノ鳥島周辺のEEZは40万平方キロと、日本全土よりも広い面積になる。

 日本の主張に対して、中国が初めて異論を唱えたのは04年。このとき中国は沖ノ鳥島は岩にすぎず、EEZは認められないとした。すると日本は、沖ノ鳥島にヘリポートと観測用レーダーを建設することで応戦。灯台や港湾施設の建設も進めた。

 どこかで聞いた話だと思う人もいるだろう。これと同じ「島か岩か問題」は、フィリピンと中国の間でも争われているからだ。フィリピンが低潮高地または岩だと主張する南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で埋め立てを進める中国の対応は、沖ノ鳥島をめぐる日本の対応と似ている。

国際裁判所への提訴も

 沖ノ鳥島をめぐる対立は4月25日に再燃した。日本の海上保安庁が、沖ノ鳥島から150カイリのEEZ内で台湾の漁船を拿捕し、乗組員10人の身柄を拘束したのだ。台湾当局は、同海域は「国際水域だ」とする声明を発表した。

 台湾の馬英九(マー・インチウ)総統は、日本が沖ノ鳥島周辺のEEZを主張することで、台湾や各国の漁業者の権利を侵害していると非難。外交的努力でうまく解決できなかった場合には、国際仲裁裁判所への提訴も検討すると付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ車販売、3月も欧州主要国で振るわず 第1四半

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ビジネス

ECB、インフレ予想通りなら4月に利下げを=フィン

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中