ベトナムの港に大国が熱視線「海洋アジア」が中国を黙らせる
文明論に基づく世界戦略
13世紀に西洋はモンゴル帝国による大陸制覇の危機に直面し、その打開に向けて16世紀から海に乗り出した。「海洋アジア」の黄金と香辛料といった豊富な物資が西洋に富をもたらし、産業革命に成功する──近代以降の歴史は西洋列強によってつくられてきたとの説を論破し、西太平洋の重要性を説いた文明史観だ。
カムラン湾をはじめ、南シナ海紛争の本質を理解するためには、アジアを中心とした世界戦略の再認識が不可欠だ。単に「アジア回帰」というスローガンを叫んでも、文明論に立脚した戦略がなければやがては頓挫する。米民主党政権は中国の領土拡張やイスラム過激派テロ、ロシアによるクリミア併合に手をこまねいている。すべては欧米だけで問題を解決しようとし、アジアを軸とした文明論的戦略が欠如しているからだ。
海洋アジアの要を成す日本は、西洋と共にいち早く近代化を実現し、世界秩序の構築に寄与してきた。今後も関与をやめる必要はない。カムラン湾を抱えるベトナムと友好関係を築き、その背後にあるインドシナ半島の住民とも連携を強化すべきではないか。
日米とインドシナの強固な結び付きで海洋の波風が収まれば、東アジアの乾燥大陸に住む乱暴な「龍」も国際法を遵守しなければならなくなるだろう。
[2016年4月19日号掲載]