最新記事

フィリピン

カナダ人を斬首したアジアの過激派アブサヤフとは

2016年4月27日(水)19時00分
ジャック・ムーア

アブサヤフはどこにいるのか?

 主としてミンダナオ島およびスルー諸島を拠点とし、ジョロ島、バシラン島から行動を起こしている。フィリピン南部で起こしてきた数々の反政府活動により、アメリカ、EU(欧州連合)、カナダはいずれもアブサヤフを過激派組織に指定している。

アブサヤフはどの国際テロ組織とつながりがあるか?

 伝統的にはアルカイダと連携してきたが、2014年のISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)勃興以後は、ISISに忠誠を誓うアブサヤフ内のグループ(セル)がいくつも出てきた。対テロ戦争の報道・分析を行うロング・ウォー・ジャーナルによれば、3月にアブサヤフのジュンド・アル・タウヒードというグループがISISに忠誠を誓い、3つめのグループとなった。ISISのメディア「Furat」がその忠誠を誓った際の映像を公開し、そこには最高指導者のイスニロン・ハピロンも映っていた。

 アブサヤフは現在、ISISの黒い旗も使用している。だが、エジプトのシナイ半島で活動するISIS傘下組織「シナイ州」のように、ISISの忠実な分派として活動するのではなく、「ISISブランド」を使って自身の知名度を上げようとしているのだろうと専門家は分析する。ISISは2014年6月にシリアとイラクにまたがる地域で「カリフ国」を設立して以来、国際的な注目を集めるようになった。

アブサヤフの目的は何か?

 分離独立派の組織として、主たる目的は、暴力と恐怖により、モロ族の人々のためにフィリピン南部に厳格なイスラム法に基づく国家を築くことだ。モロ族はこの地域のイスラム教徒を総称する呼称で、フィリピンでは少数派である。

 だが現実には、アブサヤフの活動の大半は金銭的な動機に基づいているようだ。身代金目的の誘拐を何度も行ってきた。金銭を得ようとするのは、政治目的を達成する活動の原資とするためなのか、組織内の各グループ(セル)の指導者たちが私腹を肥やすためなのか、はっきりしていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中