最新記事

原油

消えた石油増産凍結、サウジが直前で態度を翻した舞台裏

増産凍結で合意は既定路線で、原油価格も事前に上がっていた会議だったが……

2016年4月20日(水)10時19分

 4月18日、合意は既定路線と見られていた主要産油国の増産凍結協議が、サウジアラビアの反対で決裂した。写真は、サウジのヌアイミ石油相。カタールの首都ドーハで2月撮影(2016年 ロイター/Naseem Zeitoon)

 合意は既定路線と見られていた主要産油国の増産凍結協議が、サウジアラビアの反対で決裂した。サウジが直前になって手のひらを返すに至った舞台裏を探った。

 石油輸出国機構(OPEC)加盟国、非加盟国合わせた18カ国は17日、カタールの首都ドーハで開いた会合で、用意されていた合意文書に署名するばかりになっていた。合意を期待して原油価格は上がり、トレーダーは退屈な会合だと高をくくっていた。

 暗雲が漂い始めたのは、イスタンブールでイスラム協力機構(OIC)首脳会議が開かれた15日。会議出席者らはイランがテロ行為を支えていると批判し、会議後にサウジのサルマン国王とイランのロウハニ大統領がカメラの前でさや当てを演じた。

 凍てついた雰囲気は出席者の間でも、ドーハで会議を見守っていたOPEC関係者らの間でも直ちに話題に上った。

 ロイターが取材したOPECおよび石油業界筋のだれ1人として、OIC首脳会議が増産凍結合意の決裂に直接関係したとは述べていない。しかしイスラム教スンニ派のサウジと、シーア派であるイランの間に横たわる不信感の深さが垣間見えたと、彼らは指摘する。

 15日以降、状況は坂道を転げ落ちるように悪化していく。

 複数の関係筋によると、サウジは17日の会合の数日前になってカタールに対し、会議に出席できるのは増産凍結の用意がある国だけだと主張、イランの招待を取り消すよう迫った。

 1月に制裁を解除されたイランはかねて、市場シェアを回復したい意向を示していた。そして増産凍結を提唱するベネズエラとロシアが、イラン抜きでも合意するようサウジを説得してくれるだろうと踏んでいた。

 前出の関係筋らによると、サウジはカタールに対し、イランが増産凍結に合意する気もなく会議に表れるようなら、交渉は決裂だ、と言い渡した。

サプライズに次ぐサプライズ

 石油業界筋によると、増産凍結合意を訴える急先鋒がカタールのタミム首相だった。1月にはこの構想を伝えることだけを目的に、モスクワのプーチン大統領を訪問したほどだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独コメルツ銀CEO、単独路線を志向 「独自の計画あ

ビジネス

ウニクレディトCEO、コメルツとの合併は株主価値高

ワールド

北朝鮮、10月に最高人民会議 憲法改正を議論へ

ビジネス

伊外相、中国製EV追加関税支持 中国商務相との会談
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将来の「和解は考えられない」と伝記作家が断言
  • 2
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優雅でドラマチックな瞬間に注目
  • 3
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライナ軍MANPADSの餌食になる瞬間の映像を公開
  • 4
    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…
  • 5
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 8
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 9
    広報戦略ミス?...霞んでしまったメーガン妃とヘンリ…
  • 10
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 4
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 5
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 6
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 9
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 10
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...い…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 6
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 7
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 8
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中