消えた石油増産凍結、サウジが直前で態度を翻した舞台裏
カタールは15日、細心の外交戦術を通じてイランにメッセージを伝え、同国は数時間後、会議欠席に快く応じた。会議参加者はほっと胸をなでおろした。
しかし、それだけでは不十分だった。
サウジでは、石油問題の最高責任者であるムハンマド副皇太子が16日公表のインタビューで、イランを含むすべての産油国が増産凍結に合意しない限り、サウジは生産を抑制しないと言い放つ。
ヌアイミ石油鉱物資源相も同日、同じ内容を発言。合意はここに崩れ去った。
両者がどの時点でこうした結論に至ったのか、また同じ理由で結論を下したのかどうかは不明だ。
サウジの動機はイランを罰することだけではなかったのかもしれない。関係筋らによると、あまり早く相場を回復させることで、米産油業者などの商売敵が再び生産を拡大するのに手を貸したくなかった可能性もある。
しかし関係筋によると1つだけ確かなことがある。サウジの同盟国である湾岸諸国が直ちにヌアイミ氏と歩調を合わせたとはいえ、同氏の決定は完全なサプライズだったことだ。
このことが浮き彫りにするのは、伝統的にクウェートやアラブ首長国連邦(UAE)、カタールに相談して物事を進めてきたサウジの姿勢が、ムハンマド皇太子を主役とする、自己主張が強く現実主義的な新指導部の下で変化しつつあることだ。
2014年末に原油価格が急落を始めたのは、サウジが、米シェール業者などよりコスト高の生産手を市場から追い落とそうと、生産を拡大してからだった。
複数の関係筋によると、ロシアのエネルギー相は17日、ヌアイミ氏に、何らかの形で拘束力のある増産凍結合意を結ぶことは可能だろうか、と尋ねた。
市場シェアをめぐる新たな戦いの勃発を告げるかのように、ヌアイミ氏の返答は「ノー」だった。
PVMブローカレッジのマネジングディレクター、デービッド・ハフトン氏は「サウジがまたしても他の産油国に鉄槌を下した。シェール生産者および、つかの間の相場復活に望みを託すシェール業者の債権者にとって、とどめの一撃となるはずだ」と語った。
(Vladimir Soldatkin、 Sam Wilkin、 Tom Finn記者)