北朝鮮レストラン「美貌ウェイトレス」が暴く金正恩体制の脆さ(1)
そんな彼女たちに裏切られた金正恩第一書記は、相当焦りを感じているようだ。デイリーNKの内部情報筋によると、国家安全保衛部(保衛部=秘密警察)が、海外派遣に関係する党幹部に対する統制を強めているという。
軍の幹部さえも無慈悲に粛清する「金正恩式恐怖政治」の手となり足となり暗躍している保衛部は、海外に派遣されている人員に対して、新たな監査グループを派遣。保衛部の統制強化に、北朝鮮の幹部たちは戦々恐々としているという。
しかし、そもそも今回の「集団脱北事件」は、金正恩氏が、核とミサイルや体制維持に必要な外貨稼ぎを良家の女性たちに押しつけ、厳しい労働環境とノルマで苦しめたことが原因だ。言い方を変えれば、暴走を続ける金正恩氏にウェイトレスがささやかな復讐を果たしたといったところだろうか。では、彼女たちは、どのようにして海外に派遣されるのか。そして時には「望まぬ仕事」さえも強制されている実態について、次回は報告したい。
※北朝鮮レストラン「美貌ウェイトレス」が暴く金正恩体制の脆さ(2)
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ――中朝国境滞在記』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)がある。