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パナマ文書、国務院第一副総理・張高麗の巻

2016年4月11日(月)17時50分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

「匯科系統」にしても「信義科技集団」にしてもコンピュータのソフトウェア関係を主たる製品として生産するだけでなく販売、サービス分野においてもマーケットをつかんでいたため、李聖溌は総合的なハイテク科学産業で活躍する存在となっていく。

 張高麗と江沢民が背後にいれば、怖いものなし。

 張高麗が天津市書記として力を発揮するにつれ、信義科技集団の顧客は個人から「中共公安系列」へとシフトしていき、「公安情報化と監視カメラ」「人相識別技術」「バックグラウンド・チェックシステム(学歴の真偽、犯罪歴の有無、過去の就職先における問題発生の有無などをチェックするために入力されているソフト。身分証番号を入れると一瞬で出てくるようになっている)」「ネット上の作戦シミュレーション」「財富(財産)分析システム(腐敗問題における犯罪摘発のため)」など、数多くのソフト開発を行うようになった。

 これらのソフトは、「公安、武装警察、軍隊、金融、石油、飛行場、監獄、電力、通信、学校のキャンパス」など、非常に広範な領域をカバーするに至る。

 残念ながら、自らの会社が開発した「財富分析システム」は、自分自身の情報を入力しない「特殊な」システムになっていたのだろうか。

 このたびパナマ文書によって、タックスヘイブンに少なくとも3社ものオフショア会社を持っていることが明らかになった。

 チャイナ・セブンのうち、3人もの最高指導層の名前がひっかかり、そのうち劉雲山と張高麗は、詳細に見れば見るほど「アウト!」だという実態が浮かび上がってくる。

 反腐敗を叫び党紀粛正をアピールすることによって人民の求心力を何とかつなぎとめようとしてきた習近平政権だが、これまで説明してきた部分だけでも、いかに一党支配体制の危機が迫っているかが見えてくる。

 そこに広がっているのは、金権政治の巨大な闇だ。

 中国のネット空間でパナマ文書が厳しい規制を受けているのも、当然のことだろう。

[執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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