中国商務部対北朝鮮制裁リストを発表
四、運航禁止とした品目の詳細なリストは附則書類1にある。
(筆者注:附則書類1には以上の禁止品目に関する詳細なリストが、所管の税関と商品番号とともに25項目ほど列挙してある)
線引きは可能なのか?
上記公告は、発布と同時に執行すると謳ってあるが、しかし禁止品目と各除外品目の間の線引きは、実際上、可能なのだろうか?
米とか小麦などの食料品は区別できるが、それとて人道的に庶民に渡るか否かも疑問だ。ましていわんや、一や三などの線引きが可能とは思いにくい。民間航空機などの運行とか、人命救助のための救急ヘリコプターなどの航空燃料が、軍用目的に転用されていないかは、どのようにして区別するのだろうか?
個人的な話で申し訳ないが、筆者はかつて(1947年~48年)、中国共産党軍によって食糧封鎖され、その中で餓死により家族を失い、包囲網から脱出する途中で餓死体の上で野宿した経験を持つ。そのために一時的に記憶喪失になったこともある。
したがって、その中国(中国共産党)が「人道的見地からの配慮」と強調することに、複雑な違和感を覚えるのである。非人道的な方法で数十万の無辜の民(中国人)を餓死させておきながら、今もなおその事実を認めず、犠牲者を含めて真相を語る者は「犯罪人」として拘束しているのが中国だ。その中国が「人道的見地から」という言葉を発したときに、戦慄を想起させる疑念と思い出したくない記憶への恐怖を覚えながら、中国の真相を追及しようという気持ちが抑えがたく湧いてくるのである。その執念がなかったら、このような執筆活動は続けていないので、個人的動機を挟むことをお許し願いたい。
ロシアの制裁遵守に関心を示す中国
中国はいま、たしかに厳しい姿勢で北朝鮮制裁に臨んでおり、むしろロシアが厳重に実行してくれるか否かを警戒している。
特にワシントンで開催されたばかりの核セキュリティサミットにロシアが欠席したことに注目し、米露対立に強い関心を示している。中央テレビ局CCTVでも、それをテーマとした特別番組が数多く組まれている。
中国は1960年代からソ連が崩壊する1991年末まで、激しい中ソ対立を経験しており、その時の中ソ対立を利用して北朝鮮はずるがしこく立ち回ったことがある。
ソ連が崩壊してロシアになったとはいえ、中国のこの警戒心は、消えていないように筆者の目には映る。
この中露関係も、北朝鮮を取り巻く国際環境の中で、注目に値する焦点の一つだと思う。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。