NYタイムズですら蚊帳の外、「パナマ文書」に乗り遅れた米メディア
一方で、メディア側の実情を明かしてしまえば、米大手メディアはそもそも「パナマ文書」プロジェクトに軒並み参加しておらず、生データにアクセスできないためにスタート時点では後追い報道しかできなかった、というのがおそらく本音だ。参加メディアのリストはICIJのサイトに公開されているが、アメリカからはニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、ウォール・ストリート・ジャーナル紙など主要紙が参加していない。新聞に限った有名どころで名前を連ねているのは、マイアミ・ヘラルド紙とカリフォルニアを本拠地とするマクラッチー(McClatchy)社くらいだ(本誌ニューズウィークも不参加)。
日本からは共同通信社と朝日新聞社が参加していて、ICIJのサイトに公開されている参加記者リストには共同通信の澤康臣さん(@yasuomisawa)、朝日新聞の奥山俊宏さん(@okuyamatoshi)の名前がある。他にScilla Alecci さんとAlessia Cerantolaさんも「Japan」として記載されている。
【参考記事】世紀のリーク「パナマ文書」が暴く権力者の資産運用、そして犯罪
世界的なニュースを一面から外した理由について、ニューヨーク・タイムズ紙のPublic Editor(編集部門から独立した立場で報道内容を検証する役職)であるマーガレット・サリバンは、読者から説明を迫られた。パナマ文書に関する後追い報道記事が同紙ウェブサイトで4日朝に最も読まれた10本に入るなど読者の関心が高いのにもかかわらず、4日の朝刊で「A3面」扱いだったことについて多くの問い合わせを受けたというサリバンは、4日午後、同紙ウェブサイト上で率直に釈明している。
それによれば、サリバンが同紙Deputy Executive Editorのマット・パーディーに説明を求めたところ、「我々はこの文書があるということも、調査中だということも知らなかった」と答えたという。プロジェクトに参加していないニューヨーク・タイムズは「文書にアクセスすることができなかった」ため、独自取材が十分でないまま作った最初の記事は「一面にふさわしくない」と判断した。パーディーは、現在ニューヨーク・タイムズがパナマ文書にアクセスできないことを「大きな問題だ」として、今後は出てくる情報に独自報道を交えながら報じていくと語っている。
ICIJのDeputy Directorであるマリーナ・ウォーカーによれば、ICIJが協力体制を敷くのは大手メディアというより「協力的なメディア」だ。他のメディアと情報を共有できるか、情報解禁のタイミングを守れるかなど、ICIJが重視するスタンスに合わないメディアもあるといい、過去に別の報道プロジェクトでニューヨーク・タイムズにアプローチした際には返事さえ来なかったそうだ。その経験が今回の「ニューヨーク・タイムズ外し」につながったのだろうが、一方でライバル関係にある報道機関どうしで「スクープ」を共有することに馴染まないと判断するメディアがあるのもうなずける。