安倍政権の経済対策、消費刺激策と成長戦略の2本柱の公算
短期的景気刺激策としては、日本版ブラック・フライデー(全国規模のセールスイベント実施)や、プレミアム商品券・旅行券、子育て支援バウチャー発行、インフラ整備として公共トイレのバリアフリー化、道路、橋、新幹線の整備補修、LCC乗り入れ拡大、クルーズ船寄港拡大工事、コンパクトシティ作り、中古住宅市場形成のためにバリアフリー・省エネ・耐震強化促進などが盛り込まれた。
他方で成長力強化としては、920万人にのぼる潜在的労働力の就労支援により、10─14兆円程度の所得増と消費拡大が実現するとして、高齢者の就労促進策や配偶者手当見直し、 同一労働同一賃金、保育士待遇改善などが盛り込まれた。
消費者マインド改善には、少子高齢化の下で将来不安の払拭がカギとなるため、待機児童解消への対応、第2・3子支援拡充、現役世代への還元、女性・高齢者等の希望を実現できる労働市場構築などが打ち出された。
歳出抑制は棚上げ論も
しかし、こうした幅広い経済対策を実行する上で必要な財源は、全く議論されていない。もともと内閣府では、600兆円の名目経済成長を目指すことを掲げた時点から、歳出増にカジを切る方向で動き始めていた。
財源は「アベノミクスによる成果」として税収増を活用する方針を掲げ、消費喚起策や子育て支援のために、17年度以降は税収増を本予算に組み入れることを目指している。
財政再建の目標は「歳出抑制ではなく、20年度の基礎的財政収支の黒字化」(複数の政府高官)との声も挙がっている。
一方で財務省は、昨年6月の骨太方針に歳出増を3年間で1.6兆円にとどめる目安を掲げたことから、税収増を歳出に使うことには反対の立場。債務の削減に回すべきとして、政府内でも、経済対策の財源をめぐって立場は様々だ。
5月末の伊勢志摩サミットでは、世界経済の見通しが不透明なため「財政出動がテーマになる」(政府関係者)との見通しもある。
日本にとって、財政再建と大規模経済対策をどのように両立させるのかが問われることになりそうだ。
(中川泉、取材協力:梅川崇 編集:田巻一彦)