最新記事

日本経済

安倍政権の経済対策、消費刺激策と成長戦略の2本柱の公算

2016年4月3日(日)15時15分

 短期的景気刺激策としては、日本版ブラック・フライデー(全国規模のセールスイベント実施)や、プレミアム商品券・旅行券、子育て支援バウチャー発行、インフラ整備として公共トイレのバリアフリー化、道路、橋、新幹線の整備補修、LCC乗り入れ拡大、クルーズ船寄港拡大工事、コンパクトシティ作り、中古住宅市場形成のためにバリアフリー・省エネ・耐震強化促進などが盛り込まれた。

 他方で成長力強化としては、920万人にのぼる潜在的労働力の就労支援により、10─14兆円程度の所得増と消費拡大が実現するとして、高齢者の就労促進策や配偶者手当見直し、 同一労働同一賃金、保育士待遇改善などが盛り込まれた。

 消費者マインド改善には、少子高齢化の下で将来不安の払拭がカギとなるため、待機児童解消への対応、第2・3子支援拡充、現役世代への還元、女性・高齢者等の希望を実現できる労働市場構築などが打ち出された。

歳出抑制は棚上げ論も

 しかし、こうした幅広い経済対策を実行する上で必要な財源は、全く議論されていない。もともと内閣府では、600兆円の名目経済成長を目指すことを掲げた時点から、歳出増にカジを切る方向で動き始めていた。

 財源は「アベノミクスによる成果」として税収増を活用する方針を掲げ、消費喚起策や子育て支援のために、17年度以降は税収増を本予算に組み入れることを目指している。

 財政再建の目標は「歳出抑制ではなく、20年度の基礎的財政収支の黒字化」(複数の政府高官)との声も挙がっている。

 一方で財務省は、昨年6月の骨太方針に歳出増を3年間で1.6兆円にとどめる目安を掲げたことから、税収増を歳出に使うことには反対の立場。債務の削減に回すべきとして、政府内でも、経済対策の財源をめぐって立場は様々だ。

 5月末の伊勢志摩サミットでは、世界経済の見通しが不透明なため「財政出動がテーマになる」(政府関係者)との見通しもある。

 日本にとって、財政再建と大規模経済対策をどのように両立させるのかが問われることになりそうだ。

 (中川泉、取材協力:梅川崇 編集:田巻一彦)

 

[東京 29日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

 

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:豪が子どものSNS利用禁止を計画、「孤立

ビジネス

利下げ急ぐ必要なし、インフレ率2%回帰に向け=アト

ワールド

ハマス最高指導者後任、ガザ地区外から選出か シンワ

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P最高値、ネトフリとハイテ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選 決戦前夜の大逆転
特集:米大統領選 決戦前夜の大逆転
2024年10月22日号(10/16発売)

米大統領選を揺るがす「オクトーバー・サプライズ」。最後に勝つのはハリスか? トランプか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料を1ウォンも払わず 「連絡先分からず」と苦しい言い訳
  • 2
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 3
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「ATACMS」攻撃、無防備な兵士たちを一斉爆撃
  • 4
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    メーガン妃とヘンリー王子の「王室離脱の舞台裏」を…
  • 7
    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…
  • 8
    国立科学博物館『鳥 ~ゲノム解析で解き明かす新しい…
  • 9
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 10
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 1
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 2
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 3
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思っていたが......
  • 4
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 5
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 8
    性的人身売買で逮捕のショーン・コムズ...ジャスティ…
  • 9
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 10
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 10
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中