南シナ海「軍事化」中国の真意は
南沙諸島と西沙諸島にはもう1つ大きな違いがある。西沙諸島に関しては、領有権争いが存在しないという認識を中国側が持っている点だ。南沙諸島とは異なり、西沙諸島については(かつて領有権を主張していた南ベトナム政府軍が、74年の軍事衝突で中国軍に蹴散らされた結果)現に島々の領有権を主張し、実効支配しているのは中国だけだ。
現在のベトナム政府も西沙諸島の領有権を主張しているが、中国はそれを認めず、解決すべき領有権問題は存在しないとする(尖閣諸島に関する日本の立場と似ている)。北ベトナム政府が56年に領有権を放棄したとも、中国は主張している。
それゆえ、ウッディー島における中国の軍事展開について問われた中国外務省の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官は、「西沙諸島は中国固有の領土であり、領有権問題はまったく存在しない」と答えた。
さらに、領有権問題が存在しない以上、中国とASEANが署名した02年の「南シナ海行動宣言」の対象に西沙諸島は含まれないと付け加えている。同宣言は、南シナ海における「平和と安定を脅かすような挑発行為の自制」などについて合意したものだ。
騒ぎ過ぎるのは逆効果?
この宣言があるからといって、中国政府が南沙諸島に軍事施設を建設しないとは限らない。何しろ、中国は南沙諸島も自国の領土と考えているのだから。
中国国防部の呉謙(ウー・チエン)報道官は、将来的に南沙諸島にミサイルなどを配備する予定があるか問われると、「中国は過去も現在も、一時的にでも恒久的にでも、自国の領土にどんな兵器や装備を配備するかを決定し、実行する正当な権利を有する」と答えた。
【参考記事】一隻の米イージス艦の出現で進退極まった中国
ウッディー島での最近の動きがここまで懸念されるのは、南沙諸島でも似た展開になる恐れがあるからだ。グレーザーに言わせると、中国は南シナ海での「接近阻止能力を獲得し、領海と領空の支配を強化しようとしている」ようだ。
しかし同時に、これまで示したのと同じ理由で、米当局者や安全保障のアナリストたちはウッディー島での動きにばかり目を奪われるべきではない。実際、ウッディー島のミサイルや戦闘機配備に焦点を当て過ぎるのは逆効果をもたらしかねない。