最新記事

領土問題

南シナ海「軍事化」中国の真意は

2016年3月23日(水)19時37分
シャノン・ティエジー

 そしてウッディー島には、何十年も前から中国軍の基地がある。紅旗9地対空ミサイルや殲11戦闘機の配備も、今回が初めてではない。

配備は恒久的なものか

 米太平洋艦隊のスコット・スウィフト司令官が語っているとおり、中国は過去に少なくとも2回、この島に紅旗9地対空ミサイルを配備している(いずれも軍事演習の一環だったが)。殲11戦闘機も、直近では昨年11月に飛来している。

 問題は、今回の配備の背景にある事情だ。「特に新しい展開ではないが、いったい中国側の意図は何なのか。いつまで配備を続けるつもりなのか。そして、これら兵器システムの前方配備は恒久的なものなのか。それが問題だ」と、スウィフトは断言する。

 アジア海洋透明性イニシアチブ(AMTI)の専門家らが先に発表した分析で触れているが、紅旗9地対空ミサイルが配備される以前から、ウッディー島には複数の軍事施設が存在し、対空戦闘能力があったと考えられる。「同島には以前から2700メートルの滑走路、レーダーや航空機の格納庫があり、防空の備えがあった」とAMTIは指摘している。

 もちろん、今回の新規配備を軽視していいと言うつもりはない。もしも最新鋭の兵器システムの前方配備が恒久的なものであれば、それは南シナ海における人民解放軍の戦闘能力(接近阻止能力を含む)の向上を意味する。

 だがもっと重要なのは、ウッディー島での最近の動きから、中国が今後、南沙諸島の新たな拠点でどんな行動に出るかを読み取れるかもしれない点だ。AMTIも指摘するように、結局のところ「ウッディー島は南沙諸島、特にファイアリークロス礁、ミスチーフ礁、スービ礁における中国の進出の先行モデル」と言える可能性が高い。

【参考記事】米爆撃機が中国の人工島上空を飛んだことの意味

 西沙諸島と南沙諸島では、軍事化の意味が異なる点も見逃してはならない。米戦略国際問題研究所のボニー・グレーザー上級研究員が言うように、中国は「ずっと前に」西沙諸島を軍事化しており、「今は最新鋭の装備を導入している」段階だ。

 一方の南沙諸島では、中国は「軍事用にも民生用にも利用できる設備を『公共財であり、防衛だけが目的』と言い逃れしながら大量に建設している」と、グレーザーは指摘する。

【参考記事】中国が南シナ海に造る「万里の長城」の意外なもろさ

 南シナ海を「軍事化する意図はない」という習の発言は、特に南沙諸島について述べられたものだ。そうであれば、南シナ海における中国の本当の意図が試されるのは南沙諸島だということになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ミランFRB理事の反対票、注目集めるもFOMC結果

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

前場の日経平均は反発、最高値を更新 FOMC無難通

ワールド

ガザ情勢は「容認できず」、ローマ教皇が改めて停戦訴
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中