最新記事

注目作

悪魔のように殺し、聖人のごとく慕われた男

2016年3月11日(金)14時53分
ルドルフ・ハーゾグ

【参考記事】テロ組織とゲリラを結ぶ危険な線

 最初はもたもたしたところもあるが、後半はアクションもにらみ合いのシーンも観客をぐいぐい引っぱっていく。何度もニックに「やめるんだ!」と叫びたくなるが、愛という魔法にかけられた彼はどんどん悪に染まってしまう。追う者と追われる者、犯罪者と聖者の区別は曖昧になり、ニックはやがて、自分もエスコバルにとっては捨て駒にすぎないと理解する。

 エスコバルに哀れみを感じる瞬間もある。現実の彼が多くの人をむごたらしく殺したことを考えると、映画は美化し過ぎだという批判もあるだろう。

 だが、悪人も傷つくときがあり、家庭人としての時間がある。それを目の当たりにすると、異常な殺人者も怪物ではなく、ごく普通の人間なのだと気付く。

 観客は、自分も悪に走る可能性があると認めないわけにはいかなくなる。悪とは、おとぎ話に出てくる人食い鬼のようなものではない。それは人間の顔をした私たちの中に潜んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月実質消費支出、前年比+2.7%=総務省

ビジネス

ECBは貿易摩擦の動向注視すべき=クロアチア中銀総

ワールド

米政権の退職勧奨、連邦職員6万人超受け入れ 地裁は

ビジネス

米金利「かなり長い間」据え置きも、労働市場安定なら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 3
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮兵が拘束される衝撃シーン ウクライナ報道機関が公開
  • 4
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 8
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 9
    「僕は飛行機を遅らせた...」離陸直前に翼の部品が外…
  • 10
    スーパーモデルのジゼル・ブンチェン「マタニティヌ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 6
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 7
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中