中国は座視しない!――朝鮮半島問題で王毅外相
ということは「中国は座視しない」のは、「もし戦争になったら全てアメリカのせいだ」から、ということになる。北朝鮮の「労働新聞」の言葉を借りてはいるが、中国もまた米韓合同軍事演習を、韓国にTHAADを配備すると同じくらいに、「中国に対する挑戦でもある」とみなしていることになろう。
【参考記事】中国、アメリカに踊らされたか?――制裁決議とTHAAD配備との駆け引き
中国は、アメリカとともに国連安保理常任理事国として対北朝鮮制裁決議に賛同しているために、なかなかアメリカに対して米韓合同軍事演習をやめろとは言いにくい立場にある。アメリカが、これは北朝鮮に対する牽制以外の何ものでもないと弁護するのを知っているからだ。中国が米韓を批難すれば、アメリカから「やっぱり中国は北朝鮮の味方をする気か」と言い返されるのを中国は知っている。
冒頭にご紹介した王毅外相の発言を注意深くご覧いただくと、そこには「アメリカ」という言葉はなく、「関係各方面(各方面の関係者)」という言葉を慎重に選んでいることに、お気づきになるだろう。
しかし、万一にも本当に朝鮮半島が戦火に見舞われることがあったら、中国は中朝同盟に沿って北朝鮮側に付かなければならないことになる。
それだけは「ごめんだ!」と中国は思っている。アメリカとは戦いたくない。
それならいっそのこと「自ら北朝鮮に攻め込み中朝戦争を起こした方がましだ」とさえ思っているくらいだ。
その中国のジレンマが、王毅外相の「中国は絶対に座視しない」という言葉として現れたと解釈すべきだろう。王毅外相が記者会見場で「アメリカ」という言葉を使わなかった細心の配慮は逆に、そのジレンマがいかに激しいものであるかを物語っていると、筆者には見える。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
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