トランプ勝利で深まる、共和党「崩壊の危機」
以上のように、「反トランプ連合」が結集できる見通しは、スーパーチューズデー終了時点では見えてきていない。スーパーチューズデーが「以降実施の予備選では勝者総取り(代議員数)」になる前の最後の段階で「候補を絞り込む」のが目的であるなら、共和党はその「絞り込み」には完全に失敗した。
このままでは、共和党内に「全国レベルでは反トランプが53%(Fox News)」いるにもかかわらず、共和党はトランプの対抗馬を一本化できないまま、共和党は今後「勝者総取り」でトランプが代議員数をどんどん上乗せしていくのを「指をくわえて見ている」しかない。
共和党指導部の中では、7月の党大会の時点で、トランプ候補を「1位だが代議員数の過半数は取れていない」状態に持っていき、党大会の場で代議員の談合によって「保守本流候補」にスイッチする作戦が囁かれていた。だがこのままでは、このシナリオは成立せず、トランプが予備選で「代議員の過半数」を取ってしまう可能性が見えてきた。
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ワシントン政界では、「共和党の統一候補はトランプにジャックされた」ため、それとは別に「保守本流の大統領候補を無所属で立てる」という作戦すら検討されているという。ただその場合、南部の一部の州では「万単位の署名」を集めないと選管が候補を受け付けないそうで、そのためには「時間がない」という疑念の声もある。
まさに共和党にとって「存亡の危機」だが、それは単純にトランプが嫌だとか、トランプではヒラリーに勝てないからという理由ではない。トランプの主張は「排外、政治的正しさへの反抗」といった「表層」をはがしてしまえば、その中身は、「小さな政府ではなく必要な福祉施策は行う」「自由貿易より国内雇用」「世界の警察官でなく仲介役」といった政策から成り立ち、妊娠中絶に理解を示すなど宗教保守派とも一線を画している。
つまり、共和党の中核イデオロギーと真っ向から対立しているわけで、このまま「トランプを大統領候補として担いだ」格好では、上下両院、あるいは州知事の選挙は戦えなくなってしまう。
党大会の場で「談合」して「トランプ外し」をしようとか、「保守本流の無所属候補」を擁立するというと、まるで陰謀渦巻くテレビドラマのようだ。だが、実はアメリカの長い歴史を見てみると、ポピュリズムと連邦政府の衝突というのは何度も経験している事態でもある。
このまま保守本流が引き下がるとは思えない。共和党は「崩壊の危機」に瀕しているが、同時にトランプを「外し」てこの危機を乗り越えるために、驚くべきドラマを演出する可能性は残されている。