最新記事

朝鮮半島

中国訪韓、対北朝鮮制裁に賛同の用意あり──THAADの配備は牽制

2016年2月17日(水)17時51分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

韓国の選択は 中国が配備に反対しているTHAAD U.S. Department of Defense, Missile Defense Agency

 中韓外交部門ハイレベル戦略対話のため中国代表が訪韓し北朝鮮への国連安保理制裁に賛同の用意があることを伝えた。但しTHAADの韓国配置をしないのが条件だ。ドイツで外相会談をし、韓国で次官級会談をした中国の思惑は?

中韓外交部門ハイレベル戦略対話

 2月16日、第7回の中韓外交部門ハイレベル(次官級)戦略対話をソウルで行なうために、中国外交部の張業遂・常務副部長が訪韓し、韓国の韓国外務省の林聖男(イム・ソンナム)第一次官と対談した。

 張業遂は外交部常務副部長であるため、日本語としては「外務次官」と一般に翻訳されているが、実は中国外交部の中国共産党書記で、他の副部長(外務次官)とは異なる。

 中韓外交部門ハイレベル戦略対話という枠組みは、2008年12月に創立されたが、第6回対話は2013年6月3日に北京で挙行されて以来、実は途絶えている。今般は2年8カ月ぶりの開催だ。
張業遂・常務副部長は「中国は国連安保理が北朝鮮制裁に関して、これ前より厳しい新しい決議を出すことには賛成である」とした上で、「同時に対話と協力により問題の根本的解決への道を模索すべきだ」と述べた。

 しかし、「米韓が韓国にTHAAD(高高度迎撃ミサイル)を配備することについて、中国は反対する」と明言した。韓国側は「THAADの配備により中国の利益が損なわれたり、韓中関係に影響が出ないように配慮する」とはしたものの、安保理決議の厳しさのレベルには、なお隔たりがあり、韓国へのTHAAD配備に関してはさらなる立場の相違がある。

ミュンヘンにおける中韓外相会談

 中国の王毅外相は2月11日に、ミュンヘン安全保障会議出席のためにミュンヘンを訪れていた韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と会談している。その際、北朝鮮への制裁をめぐる新たな国連安保理決議を迅速に採択する必要性について、中国も賛同するという認識は共有している。

 ただし、その制裁内容に関して、ケリー国務長官が王毅外相に伝えた米議会で決議した米国独自の制裁のような制裁レベルに関しては、中国は賛同できないとしており、ましてや韓国にTHAADを配備することに関しては絶対反対だという意思を、中国政府は表明し続けている。

 中国としては国際社会がこれまでより強い制裁決議をすることに関しては賛同するが、北朝鮮を極限まで追い詰める制裁をすることには賛同できないというのが基本姿勢だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中