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中国著名企業家アカウント強制閉鎖――彼は中国共産党員!

2016年2月29日(月)19時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 年一回開催される全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当する立法機関)が目前に迫っている今、全人代を無事に開催閉幕まで持っていこうというのが、現時点での中国の最大の関心事だ。なんといっても、習近平政権になってからの初めての5カ年計画が始まる。だから言論空間は党と政府を擁護するものでなければ困る。

 筆者に警告メールが来たのも、こういった流れの中の一環だろう。

党員として党の批判はどこまで許されるのか?

 日本でも同じようなことが言えると思うが、ある党の党員が、自分が所属する党の批判をネットという公けの場で公開していくということが、どこまで許されるのだろうか?

【参考記事】中国の党と政府のメディアがSMAP解散騒動を報道する理由

 たとえば我が国の自民党の場合を例に挙げてみよう。

 自民党党員が自民党内の集まりで自民党のあり方に関する批判をするのは、これは「あり」だろう。そういう批判を受け入れる度量がなければ、その党は向上していかない。

 しかし、その党員が自民党内部における集まりではなく、ネット空間で自民党の批判を公開したとしたら、どうだろうか?

 きっと自民党本部から批判されて、「そういうことは党内でやってくれ。党外の一般国民に対して自民党の批判を広めていくのなら、党を脱退しろ」と言われるだろう。

 任志強氏の場合も、中国共産党を脱退すればいいだろうと思うが、脱退せずに反政府反党言動を続けたのは、なぜなのだろうか?

 中国には特殊な事情がある。一党支配体制にあること以外に、党の特殊な事情があるのだ。

 江沢民は、総書記を辞任しなければならない時期に来た2002年、「三つの代表」を党規約の中に入れさせて、企業経営者(資本家)でも党員になっていいという規則を制定した。改革開放により人民は誰でも金儲けをしていいことになったので、中国経済の中枢を担う企業経営者を中国共産党側に引きつけなければ一党支配体制は危なくなると考え たわけだ。
 
 そのときから「金と権力」の癒着が激化し、こんにちの腐敗天国を生むに至っているのだが、それを逆利用しようとしている資本家たちが中国にはいる。

中国のネット空間に出現した「資本翻天派」

 その一派を「資本翻天派」と称する。

 これはどういう意味かというと、企業経営者として大量の資本を集めたのちに、その資本を用いて政権に影響を与え、欧米型の「憲政の道」を歩ませようと世論を導いていく一派のことだ。「翻天」は文字通り「天を翻(ひるがえ)す」=「政権をひっくり返す」という意味である。

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