中国著名企業家アカウント強制閉鎖――彼は中国共産党員!
不動産会社社長である任志強氏は、まさにこの「資本翻天派」の一人だと、政府寄りのメディアは断罪している。
もし任志強氏が「資本翻天派」であるなら、それはそれで歓迎すべきだろう。
しかし、もう一つの見方ができる。
党に留まって党を批判するのは、中国共産党の本来あるべき姿を党員として求めているからであり、こういう人こそ、本当に党を愛し国を愛しているのではないかという見方だ。党規約や憲法に「人民のために服務」とか「人民こそが主人公」などと書いているが、それがいかに「空々しいスローガン」であるか、真の良心を持った党員としての彼の叫びではないだろうか。
党内で叫べば、必ず握りつぶされるので、新メディアという媒体を通して8900万人におよぶ中国共産党員に発信する。「三つの代表」によって資本家に権利を与えたのは、ほかならぬ党であるということを逆手に取っているのだ。
彼の主張は「中国共産党とは何か」という、最も根本的な問いでもある。
党籍をはく奪されるというインパクトも含めて、彼は中国という国と勝負しているのだと筆者には見える。
任志強氏の反骨精神を応援したい。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。