メディア管理を強める中国――筆者にも警告メールが
官製メディアの力はIT化の前に崩れつつある(昨年12月、世界インターネット会議を主催してネットにも秩序を求めた習近平) Aly Song- REUTERS
2月18日、中国における昔の身分を公開することへの警告が中国政府の公的機関から来た。その翌日、習近平総書記が新聞世論工作座談会を開催したことを知る。中国でいま何が起きているのか、当事者として分析を試みたい。
中国政府のシンクタンク中国社会科学院から警告メールが
2月18日、中国政府のシンクタンクの一つである中国社会科学院社会学研究所から一通のメールが届いた。社会学研究所の公印が捺してある公文書だ。
そこには「あなたは確かにかつて我が研究所の客員教授だったが、今は違う。もう十数年も学術的交流を持っていない。したがって公的な場において"中国社会科学院社会学研究所客員教授"(現任)という肩書を使ってはならない」という趣旨のことが書いてある。
さらに「この文書を受け取ったら、必ずすぐに返事をするように」とのこと。
いったい何が起きたのか?
あるいは何が起きようとしているのか?
このような警告メールをもらったのは初めてのことなので驚いた。
筆者はすぐに返事を書いた。おおむね以下のような内容だ。
――懐かしいお便りをありがとうございます。貴方も書いておられる通り、私はかつて、まちがいなく貴研究所の客員教授でした。したがって「歴任したことがある」と、過去の履歴として書いています。「現任」と書いたことは、ここ十数年ほどありません。過去の履歴を偽りなく書くことは、むしろ義務であり、正当な権利だと思います。ご安心ください。
ついでに、「なぜまた突然このような公文書を出すのか」に関しても質問をしておいた。
もちろん返事は来ない。
何かあるなと思っていると、翌19日、習近平総書記(以下、敬称省略)が党としての宣伝活動に関して重要講話を発表したことを知った。
【参考記事】香港「反中」書店関係者、謎の連続失踪──国際問題化する中国の言論弾圧
なるほど。これだったのか。
社会科学院では、党と政府に何か大きな動きがあるときには、事前にスタッフ全員に緊急招集がかかり、党と政府の方針に忠実に従って行動するよう指令がかかる。
公文書の捺印日時は2016年2月13日だ。
つまり1週間以上前から、すべては19日の重要講話に向かって、一糸乱れず動いていたことになる。
党の「新聞世論工作座談会」開催
19日の中央テレビ(CCTV)は、習近平が人民日報社、新華社、中央テレビ局を訪問した様子を特集番組で伝え続けた。いずれも党と政府の最大宣伝メディア機関である。
迎える各社の職員たちは、大歓声と熱烈な拍手で習近平を迎え、「好(ハオ)!」という声を一斉に発した。
「好(ハオ)!」というのは、好きか嫌いかではなく、良いか悪いかを評価するときの「良い!」「「すばらしい!」を表現するときに使う言葉だ。たとえば京劇などの芝居を見るときに、すばらしい場面になると、役者さんへの賞賛の言葉を表すためなどに対して使われてきたという習慣がある。