最新記事

事故

台湾地震、倒壊マンションに隠されていた「手抜き工事」

現場のマンションの壁から見つかったのは食用油用の缶だった──

2016年2月9日(火)10時38分

2月7日、台湾南部で6日発生した地震で倒壊した高層マンションの14階に住んでいた若い夫婦は、以前から同マンションの安全性が疑わしいという手掛かりを得ていた。6日撮影(2016年 ロイター)

 台湾南部で6日発生した地震で倒壊した高層マンションの14階に住んでいた若い夫婦は、以前から同マンションの安全性が疑わしいという手掛かりを得ていた。

 だがそれも、今となっては手遅れとなってしまった。

 Chen Yi-tingさん(35)と夫のLin Wu-chongさん(38)は5年前、台南市の中心部にあるこの17階建てマンションの1室を購入したが、住宅ローンを借りる際にちょっとした問題が起きた。最初に訪れた銀行では、理由も告げられずにローン申請を断られた。結局はローンの組める別の金融機関を見つけることができ、夫妻は幼い娘と一緒にマンションに移り住んだ。

 だがChenさんの母親によると、建築がずさんなため、同マンションに入居する人からのローン申請は却下する方針であったと、最初の銀行と関係がある夫妻の友人の一人がまもなくして教えてくれたという。

 現在、夫妻は市内の別々の病院で集中治療を受けている。Chenさんは頭がい骨にひびが入り、Linさんは肺を損傷した。

 2人の7歳になる娘は帰らぬ人となった。

 「彼らのように市外から移り住んできた人たちには、以前に何が起きていたか見当もつかない」と、Chenさんの母親は集中治療室の外で待つ間に語った。

 「最初のデベロッパーが倒産して、次の業者が建物を完成させたことなど、当初は知る由もなかった。彼らが知ったのは、契約書にサインした後だった」

6日未明にマグニチュード(M)6.4の地震が発生してから、救出活動の現場は主にこの築20年のマンションだ。同マンションで少なくとも24人の死亡が確認され、今なお100人以上ががれきの下に取り残されている。

 人口約200万人の台南市で、全壊した主な高層ビルはこのマンションだけだ。

 61歳の母親は、地震が起きる以前から、マンションの住民が壁のタイルのはがれやエレベーターの不調、パイプの詰まりといったような数々の問題について、ずっと不満を訴えていたと話す。

 Chenさん夫妻は350万台湾ドル(約1230万円)でマンションを購入した。

 「私たちは単純だから、(最初にローンを断られても)何か他に理由があるとは考えなかった」と、母親は語る。

壁から食用油の缶

 台南市は、同マンションが合法的に建築許可を取得しており、今回よりもはるかに破壊的だった1999年の地震に耐えられたとしている。台湾中部を震源とする同地震では、2400人が死亡し、同国全土に被害をもたらした。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中