最新記事

人権問題

中国は今も囚人から臓器を摘出している?

世界的な臓器不足に応えるため、そしていまいましい反体制派を葬るための不自由な「臓器提供」

2016年2月2日(火)17時29分
ジャクリン・コーレー(米デューク大学医学センター研修医)、ジャスティン・ハスキンス(ライター)

「虐殺を止めろ」 中国政府による法輪功弾圧に抗議するルーマニアの法輪功フォロワー(ブカレスト、2011年) Radu Sigheti-REUTERS

 中国政府は、政治的・文化的に現政権に敵対する人々から臓器を摘出している――にわかには信じられないが、世界中の著名な研究者や学者、政府関係者らの多くがそう主張する。

 中国、そして世界で、患者たちが切実に臓器を必要としているのは周知の事実だ。そして中国政府は、ありとあらゆる理不尽な理由から、健康な囚人を何万人も監禁している。そして増加する臓器需要を満たすため、また移植を求めて西側諸国からやってくる「臓器ツーリスト」に移植を提供するため、これらの囚人たちを密かに利用している、と専門家たちは話す。

 中国政府が長年、囚人、特に死刑囚からの「臓器提供」を認めてきたことは広く知られている。国際的な医学界のリーダーや政府関係者、各種機関はこうした行為に激しく抗議し、そもそも収容所に監禁されている囚人たちは、自由意思で「提供」を申し出たわけではない、と主張してきた。

【参考記事】臓器売買に走るマイクロクレジットの闇

 中国政府はこれまで、囚人数や臓器提供数、囚人の扱いに関するデータをほとんど公開していないが、多くの人権活動家たちは、政府が一部の囚人に対して臓器の提供を強要している可能性があると主張している。

 反体制派とされるキリスト教の一派であるハウスチャーチやチベット人、法輪功(1992年に誕生した、非合法とされる中国の平和的宗教運動)の信者たちは、中国政府が1990年代以来、臓器摘出を含む極度の虐待を行っていると主張している。

『The Slaughter: Mass Killings, Organ Harvesting, and China's Secret Solution to Its Dissident Problem(大虐殺:大量殺人、臓器収穫、そして反体制派問題に関する中国の秘密の解決策)』の著者であるイーサン・ガットマンと、人権活動家でカナダの庶民院(カナダ)元議員のデービッド・キルガー、ドキュメンタリー作家のケン・ストーンによる独自調査は、法輪功などの中国反体制派グループの主張が正しかったことを明らかにしている。ただし、この問題がどれほどの規模のものなのかを正確に推し量るのは難しい。情報がほとんどないからだ。

臓器摘出で政治犯の命を奪う

「中国の外科医が、政治犯に対して摘出手術を行っていることはわかっている。『ドナー』が手術中、まだ生きていることもある。臓器摘出手術が彼らの命を奪っている」とカトリーナ・ブラムシュテット教授はインタビューのなかで語った。同教授は豪ボンド大学の研究者で、囚人の臓器摘出を批判してきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中