最新記事

朝鮮半島

北朝鮮がアメリカに平和協定要求――新華網は2015年10月18日にすでに報道

2016年2月22日(月)20時50分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

核をめぐって 北朝鮮の核実験に抗議する韓国の男性(2月) Kim Hong-Ji-REUTERS

 アメリカのメディアが「1月6日の核実験前に北朝鮮が米国に対し朝鮮戦争の休戦協定を平和協定にするよう交渉していた」と2月21日に発表し、アメリカ国務省のカービー報道官がそれを認めたが、中国政府の新華網は、昨年10月18日に既にその事実を報道している。

北朝鮮がアメリカに「平和協定」を要求したわけ

 今年2月21日に、「1月6日の核実験前に北朝鮮が米国に対し朝鮮戦争の休戦協定を平和協定にするよう交渉していた」と、ウォール・ストリート・ジャーナルが報道し、アメリカ国務省のカービー報道官もそれを認めた。

 それらによれば、カービー報道官は「北朝鮮が平和協定交渉を提案した」と接触を認め、「アメリカは北朝鮮の非核化が議題に含まれなければならないと返答した」ところ、「北朝鮮が拒否した」とのこと。

 これらの動きに関しては、中国では2015年10月18日に中国政府の通信社のウェブサイトである「新華網」や、中国共産党の機関紙のウェブサイト「人民網」などが、一斉に報道している。
タイトルは「朝鮮はアメリカに平和協定締結を再三呼び掛けている」である。

 この「平和協定」とは、「朝鮮戦争(1950年6月25日~1953年7月27日)において署名された休戦協定を、終戦を意味する平和協定(講和条約)に切り替えてくれ」という意味の平和協定である。

 1953年7月27日に板門店で、連合国軍を代表してアメリカ陸軍が、朝鮮人民軍および中国人民志願軍の代表と「休戦協定」に署名した。

 この休戦協定には「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」という文言がある。しかし、その「平和的解決」が今日になってもまだ成されてないので、平和協定に持っていってほしいというのが北朝鮮の言い分だ(この部分だけを見ると、北朝鮮の言い分がまるで「美しく、正義」のように見えるが、途中には紆余曲折があり、もちろんそんな単純なものではない。その過程はあまりに長くなるので省く)。

 ただ、北朝鮮の「平和協定締結要求」は今さら始まったものではなく、前述した「新華網」や「人民網」のタイトルにある通り、北朝鮮は「再三にわたって」、平和協定締結の要求をしてきたのである。

 なぜなら、休戦協定の約束に従って、中国は中国人民志願軍を、1958年までに完全に北朝鮮から撤退させているのに、アメリカは約束を守っていないからだというのが、北朝鮮の言い分である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アフリカのコロナ犠牲者17万人超、予想を

ワールド

米上院、つなぎ予算案可決 政府機関閉鎖ぎりぎりで回

ワールド

プーチン氏「クルスク州のウクライナ兵の命を保証」、

ビジネス

米国株式市場=急反発、割安銘柄に買い 今週は関税政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 2
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴された陸上選手「私の苦痛にも配慮すべき」
  • 3
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 4
    中国中部で5000年前の「初期の君主」の墓を発見...先…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「天然ガス」の産出量が多い国は…
  • 8
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 9
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 10
    エジプト最古のピラミッド建設に「エレベーター」が…
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 5
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 8
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中