警官に射殺された黒人青年、直前に3度警察に助けを求めていた
野球バットを持っていただけの学生を撃ち殺す必要があったのか、人種間の緊張が高まるシカゴでまた痛恨の警察不祥事
やりきれない思い 射殺されたクイントニオの写真を手に持つ友人(12月29日) Frank Polich-REUTERS
昨年末、シカゴで19歳の少年が警察官に射殺され、またしても人種問題の絡んだ射殺事件かと注目を集めていた。今週公表された新しい記録から、その少年、クイントニオ・ルグリアが3回、911(日本の110番)に電話をかけ、オペレーターに電話を切られていたことがわかった。
12月26日の早朝、シカゴのウエストサイドにある父親のアパートの外階段で、クイントニオ・ルグリアは警察官に6発撃たれて死亡した。この事件では、隣人で5人の子供の母親であるベティ・ジョーンズ(55歳)も警察官に射殺されている。
いったい何が起こったのか。
これまでに判明していた通報は2件だけだった。1件はクイントニオ自身がかけたもの。もう1件は彼の父、アントニオ・ルグリアがかけたものだ。しかし、警察の不祥事を調査する独立警察審査機関は、市の危機管理伝達局(OEMC)がさらに2件の通話記録を提出してきたとしている。2件とも、当初公表された1件の通報よりも前にクイントニオがかけていたものだ。
最初の通報は午前4:18。「(緊急事態なので)警官に来て欲しい」と、クイントニオは助けを求めた。
「それだけではわかりません。緊急の要件は何ですか?」とオペレーター。
クイントニオは何度も緊急と訴え、ついには「身の危険が迫ってる」と言っている。オペレーターは、それ以上の詳細を話さない彼に対し、「質問に答えられないなら切りますよ」と言って、電話を切った。
OEMCのメリッサ・ストラットン報道官は、オペレーターが適切な措置を取らなかったとして、既に懲戒処分に着手しているとシカゴ・トリビューン紙に語った。命の危険があると通報者が話した時点で、警察官を現場に派遣すべきだったという。
クイントニオは4:20に2度目の通報をし、アパートに警察官を送ってくれるよう繰り返し頼んだ。3度目は4:21。別のオペレーターが電話を取り、状況をクイントニオから聞き出して、パトカーを手配した。いずれの電話でも、クイントニオの声には苛立ちが感じ取れる。
別の黒人射殺事件で抗議運動が起こったばかりだった
警察官が現場に向かっているその頃、父親のアントニオが911に通報。パニックに陥った様子で、息子が金属バットを持って「寝室のドアを壊して押し入ってきそうだ」とオペレーターに話している。
その数分後、警察官のロバート・リアルモがクイントニオを6回撃った。クイントニオがバットを振り回して襲いかかってきたという。隣人のジョーンズは、胸部を1発撃たれて死亡。撃ったのは同じ警察官で、彼女の死は「事故だった」と警察は発表している。