ISIS化するジャカルタのテロ攻撃
シリアでISISに参加した戦闘員が帰国しても、現行法では取り締まれないという大きな抜け穴も
市街地テロ 銃撃戦はジャカルタの中心部で繰り広げられた Darren Whiteside-REUTERS
インドネシアの首都ジャカルタで14日に発生した銃撃事件では、実行犯とみられる5人と民間人2人の計7人が死亡した。複数の爆発と警察との銃撃戦があったのは、買い物客で賑わうジャカルタ中心部のショッピングモール「サリナ」周辺。ジョコ・ウィドド大統領は、今回の事件を「テロ行為」と非難した。
テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)はネット上で、「ISインドネシア支部」による犯行声明を出した。しかし実行犯とみられる死亡した5人が、ISISとどのような繋がりがあったかは、まだわかっていない。
インドネシアのイスラム過激派は2000年代に入って以降、いくつかの大規模なテロを実行している。02年のバリ島爆弾テロ事件では、現場近くのディスコに集まっていた202人が死亡し、そのうち88人がオーストラリア人観光客だった。
ニュースサイト「The Conversation」では、オーストラリア・モナシュ大学のテロ対策専門家ヌール・フダ・イスマイルに、インドネシアのテロ組織の現状と、その危険性について話を聞いた。
――ジャカルタのホテルで同時爆弾テロがあったのが09年で、それからかなりの年月が経過しているが、なぜ今再びインドネシアでテロがあったのか?
インドネシア警察の対テロ特殊部隊は、2000年代に爆弾テロを実行した国内のテロ組織ネットワークの壊滅に相次いで取り組み、かなりの成果を上げた。
東南アジアを拠点とするイスラム過激派ジャマー・イスラミアのメンバーで、02年のバリ島爆弾テロの主要な実行犯2人は08年に処刑された。やはりジャマー・イスラミアのメンバーで、03年のジャカルタのマリオット・ホテルの爆弾テロにも関与した実行犯も、09年の拠点摘発時に死亡した。
しかし最近になって、インドネシアの何人かのイスラム過激派が、シリアに渡ってISISのテロに参加した。前回09年のジャカルタ同時爆弾テロ以降時間が経過しているので、インドネシアのテロ組織は活動を再開するだけの攻撃力を回復している。
またシリアの戦闘から帰還した戦闘員が、国内で下部組織を結成している。インドネシアでは多くのテログループに細かく分かれているので、彼らは自分たちの存在を示したいと考えている。
今回のテロの実行犯は、テロへの警戒が弱い1月のこの時期を狙ったのではないだろうか。警察の対テロ特殊部隊は、年末には警戒を強化し、昨年末のテロ計画は未然に防いだと報じられている。