最新記事

インドネシア

ISIS化するジャカルタのテロ攻撃

2016年1月15日(金)15時30分
ヌール・フダ・イスマイル(豪モナシュ大学博士課程)

――以前のテロと今回のテロの違いはあるか?

 以前のテロの実行犯は、大がかりな装備を使用していた。爆弾の取り扱いには注意が必要で、爆弾を仕掛ける車両も用意しなければならなかった。テロの標的は通常は1カ所で、連続テロではなかった。また実行犯は2~3人に限られていた。

 今回のテロでは、実行犯がライフルと手榴弾を使用している。実行犯の人数も以前より多い。(ジャカルタがある)ジャワ島内でライフルを入手するのは不可能なので、警察はライフルの入手先を特定するため、フィリピンのイスラム武装組織との関係についても調べる必要があるだろう。

――ISISとの関連は?

 報道では、ISISが事前に地元警察に対して、インドネシアで「コンサートが開かれ」、国際的なニュースになると警告したと報じられている(事件後、ISISは犯行声明を公開)。しかし警察はまだ、どの組織がテロを実行したのかは断定していない。

――インドネシアで活動する過激派にはどのようなものがあるのか?

 国内には「ジャマー・イスラミア」の他にも、いくつか規模の大きい過激派組織がある。いずれもインドネシアの世俗政権を転覆して、シャリーア(イスラム法)に基づくイスラム国家を創設することを目指している。

 小さなテロ組織もたくさんある。公式には大きなテロ組織とは繋がっていないが、前述のような大きなテロ組織とその指導者を敬い、活動の参考にしている。

 宗教的な信条とは無関係に、自分たちの「同胞」のテロ戦闘員を逮捕して拷問する警察当局にも怒りを募らせている。

 またインドネシアのテロ組織は、スマートフォンやソーシャルメディアを使ってお互いに連携を取り合っている。宅配サービスを使う時もある。多くの組織が、フィリピン南部やシリアのテロ組織との連絡ルートも持っている。

――インドネシア当局の対テロ戦略はどうなっているのか?

 インドネシア警察は、オーストラリア連邦警察と協力して、テロ実行計画に関する情報を共有し、武装組織の摘発にあたっている。

 しかしインドネシアの国内法には、国外で軍事訓練を受けた者た帰国しても、それを違法とする規定が無い。結果として、帰国した戦闘員を警察が特定して逮捕しても、犯罪容疑で起訴することができない。

 国外のテロ組織に幻滅して帰国する戦闘員もいるのだから、これではテロ対策にはならない。彼らを説得し、警察と協力してテロ組織の考え方を中から改めさせるように働きかけることも必要だろう。


Noor Huda Ismail, PhD Candidate in Politics and International Relations, Monash University

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ中銀が150bp利下げ、政策金利38% イン

ワールド

ウクライナ、米国に和平案の改訂版提示 領土問題の協

ビジネス

米新規失業保険申請、約4年半ぶり大幅増 季調要因の

ビジネス

米国株式市場・午前=ナスダック一時1週間ぶり安値、
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 4
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 5
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 6
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 7
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 8
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中