インド「聖なる牛」の闇市場
これほど複雑な問題にモディがどれほど熱心に取り組むつもりなのかはまだ分からない。ヒンドゥー至上主義者たちによる脅迫や牛をめぐる暴力に対し、モディの遅く、煮え切らない対応は非難の的となっている。
例えば、9月に牛肉を食べたと誤解された男性がリンチされ死亡した事件に対し、モディが発言したのは事件から10日もたってからだった。かつてBJPのリーダー格だったが現在はモディに軽んじられているアルン・シューリによれば、モディの沈黙は意図的なもので、強硬なヒンドゥー至上主義派にゴーサインを出していると解釈できるという。
危機に瀕しているのは、牛肉と革産業だけではない。モディが昨年5月に首相に就任して以来、インドは外国企業による投資先として最も人気のある国になった。だがビハール州でのBJPの大敗と宗教間の緊張によって、モディの掲げる経済改革は計画どおりに進まない可能性が出てきた。
「暴力が激化すれば、政府は野党の強い反発に遭い、議会での議論は経済政策からそれるだろう」と、米調査会社ムーディーズ・アナリティックスは先月の報告書で指摘した。
インドの牛肉をめぐる対立は国家の経済政策まで揺るがすほど複雑な問題なのだ。
[2015年12月15日号掲載]