最新記事

中国災害

深セン土砂崩れ遠因、党と政府側の責任者は?――浮かび上がった不正の正体

2015年12月23日(水)15時03分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 昨日のコラムに書いた「環球網」の報道にある通り、「毎日経済新聞」の記者が突き止めたところによれば、他の個所でも深セン市内のプロジェクトであるならば、必ず緑威公司が落札している。たとえば:

●2013年9月:深セン市宝安区新安街道財政管理所管轄下の宝民小学物業管理と非教学時の安全監理サービスに関するプロジェクトに緑威公司が99.1万元(約1883万円)で落札。

●2014年1月:深セン市宝安区福永街道塘尾万里学校の物業管理と、鳳凰小学校の物業管理などを、緑威公司が77.5万元で落札。

●2014年12月:深セン市宝安区新安街道財政管理所および福永街道事務局が申請した
学校物業管理などに関するプロジェクトを落札。

 ......などなどだ。

「新華網」深センはさらに、今般の土砂処理の工事は、2015年2月21日が期限だったことを突き止めている。それ以上延期して土砂を投棄すると許容限度を超えて危険が生じるため、期限が切ってあったというのだ。しかし、期限を10カ月以上も越えて土砂を捨て続けたのは、落札した経営権を他の企業に譲渡していたため責任の所在が不明確になっていたのと、政府側に「不正を受け容れる相手」がいたからということ以外の何ものでもない。

 10カ月延期したことによって儲けた金額は7500万元(約14億2500万円)という。

深セン市の最高責任者は誰だったのか?

 それなら、この時期の深セン市政府あるいは(および)中国共産党深セン市委員会の責任者(市長and/or党書記)は誰だったのか、ということに問題は絞られていく。

 それを考察するために、今般の土砂処理の経営権を緑威公司が落札した2013年8月のころの市長や書記が誰だったのか、何か不審な動きが見れらないかを調べてみた。

 その結果、浮かび上がってきたのは王栄という書記だ。

 王栄は1958年に江蘇省に生まれ、江蘇省無錫市や蘇州市などで中国共産党委員会の書記や市長などを務めたあと、2009年に深セン市の市長代理を兼ねながら、2010年に深セン市の中国共産党委員会書記に昇進している。

 江沢民も江蘇省の生まれで、何かと江蘇省の人間を自分の味方につけようとしていた。(一部では王栄は江沢民の妻と親戚関係にあるという噂もあるが、その真偽は別として、江沢民の息がかかっていることだけは確かだ。)

 突然(広東省)深セン市の書記になった王栄は、当時の広東省の書記・汪洋にことごとく楯突き、身分が遥か上の汪洋と公の場で言い争ったこともあるほどだ。汪洋は江沢民とは犬猿の仲であった胡錦濤の腹心で、共青団派である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

J&J、第4四半期は売上高と利益が予想上回る 抗が

ワールド

ローマ教皇、反対派の米大使指名容認へ 政治論争回避

ワールド

米財務長官候補、来週にも上院本会議で承認投票=財政

ビジネス

企業の資金需要、20年10月以来の高水準 大企業改
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 4
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    【クイズ】長すぎる英単語「Antidisestablishmentari…
  • 8
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中