深セン土砂崩れの裏に緑威公司と地方政府の利権構造
癒着している政府役人というのは、中国では二重になっていて、一つは地方人民政府の役人で、もう一つはその地方の中国共産党委員会書記などである。
2001年からの市長と書記の名前を列挙したいところだが、その誰が癒着に関わったのか、まだ特定することはできないし、またもしかしたら全ての人が「伝統的に」受け継いできたかもしれないので、具体的な人物に関しては必要に応じてまたの機会にしたい。
問題は、緑威公司が、政府が落札して請け負った土砂処理(堆積?)経営権を、別の業者に譲り渡していたということだ。
それを明らかにさせたのは22日付の「東方報業集団ウェブサイト」(東網)で、75万元(約1500万円)で「深セン市益相龍投資発展有限公司」に経営権を譲渡していたとのこと。
政府によって落札した企業が、その経営権を袖の下を使って他の企業に譲渡する行為は、中国でも違法である。
管理責任問題と中国の腐敗構造は、事故現場以上に泥沼化しそうだ。
次期国家主席有力候補、広東省の胡春華書記への影響は?
事故の犠牲者に対する関心とともに、筆者だけでなく中国人民は次期国家主席の有力候補者とされる中国共産党広東省委員会の胡春華書記に対する影響がどうなるのだろうかということに、連鎖反応的に注意がいく。
そこで土砂崩れ事故と胡春華の二つのキーワードを入れて中国のネット空間で検索してみた。すると、実に奇妙な現象が現れた。
いきなり「広東省委書記胡春華看望深セン山体事故傷員」(実際はすべて簡体字)という選択項目が出てきたので、驚いてクリックした。
ところが、どのページをクリックしても、すべて「削除されました」とか「申し訳ありません。このページは探し出せません」あるいは「not found」という表示が出てくるではないか。
これはただ事ではない。
知り合いの退職した中国政府の老幹部に確認したところ、どうやら「よからぬ噂」が流れていたので、このタイトルのページは検閲に引っかかり、全て削除されたのだという。
しかし胡春華自身は北京で開かれていた中央の会議に参加していたのだが、習近平国家主席と李克強国務院総理の支持を受けて、すぐさま現場に駆け付けたそうだ。
中国共産党新聞網によれば、「張高麗、馬凱、胡春華、楊晶、郭声●(王偏に昆)、王勇、朱小丹」などの中共中央および広東省の関係指導層に対して、緊急に救助活動に従事するよう命令を出したとのこと。
胡春華は、広東省の書記としての責任は当然負わなければならないだろうが、直接の影響は少ないようだ。継続して事態の経緯を見守りたい。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。