最新記事

テロ

自爆少女たちは爆弾と知らずに吹き飛ばされていた

少女に爆弾ベルトを巻いて遠隔操作で起爆するボコ・ハラムの非道

2015年12月17日(木)17時15分
コナー・ギャフィー

いたちごっこ 6人が死んだ自爆テロの現場に駆け付けた政府軍の兵士たち(ナイジェリア北部の都市カノ) Stringer-REUTERS

 いたいけな少女に自爆テロをさせるのはナイジェリアのイスラム過激派ボコ・ハラムの常套手段だ。多くの場合、子供は何も知らずに利用されていると、国連スタッフが15日に記者会見で訴えた。

 ボコ・ハラムはナイジェリア北東部から近隣のチャド、カメルーン、ニジェールに攻撃範囲を広げ、村々を襲撃して誘拐した子供をテロ要員に仕立てている。先月18日にナイジェリア北部の主要都市カノで起きた女2人による自爆テロでは、確認されただけで14人が死亡。女の1人は11歳くらいの少女とみられている。今月5日にはチャド湖の島で女3人が自爆し、少なくとも30人の死者が出た。ボコ・ハラムは7歳の少女に自爆テロをさせたこともある。

解放された人質200人の大半が老人と子供

 レイラ・ゼルーギ国連事務総長特別代表(児童と武力紛争担当)は、子供たちが強制的に自爆攻撃に駆り出されている現状を記者会見で訴えた。子供たちの多くは「自分の体が吹き飛ぶことになるとは知らずに」、爆弾ベルトを巻かれ、人込みに立たされる。治安当局によると、ボコ・ハラムの自爆テロは遠隔操作で起爆するケースが多く、「本人の意志による爆発ではないことは明らか」と、ゼルーギは指摘する。

 ナイジェリアのムハンマド・ブハリ大統領は年末までにボコ・ハラムの支配地域をすべて奪還すると公約しているが、09年から武装闘争を展開するボコ・ハラムの攻撃はいっこうに止まる気配がない。

 AFPによると、ボコ・ハラムは先週末、ナイジェリア北東部の3つの村を襲撃し、30人の住民を殺害した。ナイジェリア政府軍が攻勢を強めたことへの報復だと村人たちはみている。政府軍が北部で実施した人質救出作戦では、ボコ・ハラムに拉致されていた人質210人(大半は高齢者と子供)が解放され、ボコ・ハラムの戦闘員はボルノ州のサンビサ森林地帯の拠点に撤退した。それでもナイジェリアの首都アブジャをはじめ、テロは頻発し続けている。

 6年に及ぶボコ・ハラムの攻撃による死者は1万7000人以上。国内避難民は200万人を超える。ブハリ大統領は今月10日、年明けから避難民の帰還に「全力で」取り組むと宣言した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中