最新記事

民主化

中国民主活動家締めつけに見る習近平の思惑

2015年11月30日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

「五四運動」というのは1919年5月4日に、北京大学の学生を中心に行われた反日デモに端を発し,全国的な規模に拡大した反日(反日本帝国主義)および民主運動である。1921年の中国共産党誕生のきっかけを作ったのだが、現在の中国は「五四運動」の日である「5月4日」を、1989年に天安門事件が発生した「6月4日」と同じくらいに警戒している。

 なぜなら中国共産党政権には「真の民主」がないからである。

 この郭飛雄氏、その後、広東省に活動の拠点を移して民主的活動をやめなかったため、2007年に5年間の懲役刑を受けて、2011年9月12日に出獄したばかりだった。

 しかし2013年元旦の「南方週末」事件だけでなく、同年4月にも武漢、長沙、広州など中国の8つの都市で「役人の財産を公開しろ」という運動を同時に起こしたため、その組織的な責任者として、同年8月8日に拘束されたわけである。このときの罪名は「民衆を扇動して公共の秩序を乱した罪」だった。この罪名による最高刑は懲役5年。

 ところが今年11月27日、広州天河区法院(地方裁判所)は、検察が起訴していなかった罪名である「騒動を起こした罪」を加えて懲役6年の実刑判決を言い渡したのである。なぜなら彼は新公民運動の有力な推進者だからだ。「南方週末」事件は口実で、真の理由は「新公民運動」なのである。

 同時に新公民運動の仲間である劉遠東氏には3年、孫徳勝氏には6カ月の懲役刑が言い渡された。また女性コラムニストの高瑜氏も国家機密を海外に漏えいした罪により5年の懲役刑が26日に決定した。

81歳の「五七老人」鉄流氏(作家)が懲役刑という異常

「五七老人」とは、1957年に毛沢東が発した「反右派闘争」で不当に逮捕された者のうち、今もまだ生き残っている老人たちのことを指す。「反右派運動」というのは、毛沢東が1956年に「言いたいことは何でも自由に言いなさい」と知識人たちに呼びかけておきながら、彼らが寄せた意見が中国共産党や毛沢東の独裁を批判したものであったために、意見表明をした全ての者を「右派」として逮捕投獄した運動である。

 その中の一人に鉄流氏(本名:黄沢栄)(1933年生まれ)がいる。筆者の友人だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スペイン・バルセロナで再び抗議デモ、家賃引き下げと

ビジネス

欧州半導体業界、自動車向けレガシー半導体支援を要望

ワールド

焦点:ロシアの中距離弾道弾、西側に「ウクライナから

ワールド

豪BHP、チリの銅開発に110億ドル投資へ 供給不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中