ISISへ経済封鎖、米国が投入する「新兵器」
政府間会合である金融活動作業部会(FATF)の今年のレポートによれば、イスラム国の支配領域内では20以上のシリア系金融機関が営業を行っている。イラクでは、米財務省がイラク政府当局者と連携し、同グループの支配領域内の銀行支店をイラク国内及び国際的な金融システムから切り離した。
米連邦捜査局(FBI)で対テロ金融作戦部門の主任を務めるジェラルド・ロバーツ氏は、シリア以外から徴募されるイスラム国メンバーは金融取引の経路を維持していることが多く、当局はこれに「便乗」して資金ルートを追跡しているという。
ロバーツ氏は先週ワシントンで開かれた銀行業界のカンファレンスで、「彼らが通常の銀行システムを使っているのは分かっている」と述べ、さらに、若年のイスラム国メンバーはテクノロジーに強く、「ビットコイン」などの仮想通貨にも詳しいと話した。
前出のレビット氏によれば、「IS」、「ISIS」、「ISIL」などの略称で知られるイスラム国は、他の手段を用いるには金額が大きすぎるために、やむなく市中銀行を利用する場合もあるという。
米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)では一連の「ビジネスルール」を用いて、金融機関から受領する1日約5万5000件の報告から、イスラム国関連の活動の兆候を選別していると、FinCENの広報担当者は語る。
ルールそのものについての説明は拒否されたが、当局筋によれば、情報当局が照合を試みるデータとしては、氏名、IPアドレス、メールアドレス、電話番号などがあるという。
この照合によってFinCENは、「見た目では無関係な個人・団体を結びつけることができる」とFinCEN広報担当者は語る。イスラム国との関連が疑われる金融活動の手掛りが発見される件数は、4月の800件から、現在では月間約1200件に増えているという。
米政府に金融取引報告を提供しているかどうかについて、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)、JPモルガン、ウェルズファーゴはコメントを拒んでいる。こうした報告は非公開で提供されている。
シティグループ、HSBC、スタンダード・チャータードからは、問い合わせに対する回答を得られていない。
「第2次津波作戦」開始
当局者によれば、イスラム国関連の金融取引記録の利用は、シリア領内での空爆に向けた情報収集活動の一部に過ぎない。ドローン(無人機)による空中偵察などの手法も用いられている。