「中国は弱かった!」香港サッカーブームの政治的背景
また中国社会が豊かになるにつれ、子どもをスポーツ選手にさせたがらない親も増えてきた。トップ選手になったとしても引退すれば使い捨てされるだけ、ちゃんと教育を受けさせたほうがいいと考える人が少なくない。現在ではトップ選手を大学や大学院に所属させ、ちゃんと学歴をつけさせようという方針が採られているが、人々の観念を変えるまでにはいたっていないようだ。ステートアマ制度の弱体化と経済成長の二つの要因によって中国若年層のサッカー人口は激減し、代表の実力低下を招いたとされている。
こうした状況を変えようと、中国も改革を続けている。2万校のサッカー特色学校は日本の部活動を参照したもの。学校スポーツという受け皿によって、スポーツ人口のすそ野を広げる狙いだ。ただし激烈な受験競争が繰り広げられる中国では、スポーツをしている暇があったら勉強して欲しいというのが親の願い。政府の旗振りどおりにサッカーを楽しむ子どもが増えるかどうかは未知数だ。
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[執筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。