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中央アジア

ユーラシア外交で日本は今こそ「脱亜」を目指せ

2015年11月11日(水)12時32分
楊海英(本誌コラムニスト)

 遊牧民の子孫から成る中央ユーラシアの5カ国も、「自分たちこそがロシア系と絶えず混じり合うことで、舞踏や音楽をはじめ、ロシア文化に新鮮な血液を注入した」と主張して、逆に主導権を握ろうとする。ユーラシア主義という目標は一致していても、裏ではロシア人と遊牧民の子孫との主導権争いが展開されている。

 もちろん、「アジア=中国」は「一帯一路」との経済圏構想を打ち出して、シルクロードにくさびを打ち込もうとするが、ロシアも草原の民も簡単にはだまされない。遊牧民から貴重な馬をシルクで買い付けてきた古来の交易同様、一帯一路も中国が相変わらずエネルギー取引にだけ熱意を燃やす現代版「絹馬貿易」にすぎない。

 アメリカの歴史家カール・ウィットフォーゲルは「専制主義のアジアは革命を経た後も専制のままだ」と喝破した。「アジア=中国」に民主化と人権尊重の定着を期待するのは時期尚早だ。むしろ、脱中国という意味での「脱亜」の価値観を再確認し、それに則したユーラシア外交の戦略を日本は綿密に練り直す必要に迫られている。

[2015年11月10日号掲載]

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