「カネ不足」に悩むISISの経済危機
ISISの経済運営が順調ではないことを物語る証拠はほかにもある。ISISは8月末、独自通貨の発行を宣言する1時間の動画を公開した。「カリフ国の勃興──ディナール金貨の復活」と題したこの動画で、ISISは金本位制を復活させ、「人々を奴隷にするアメリカ資本主義の金融制度を破壊する」と豪語している。
しかし、それからほぼ1カ月たった今も、ISISは戦闘員に米ドルで給与を支払っている。
経済・財政運営につまずいて、ISISの支配は終焉を迎えるだろうか。そうとは限らないと、ランド研究所のアナリスト、ベン・バーニーはみる。
「ISISの支出はわずかだ。給与以外はほとんど使っていない。公共事業はほぼゼロ。福祉も1回限りのばらまきだけだ。ISISは90年代にイスラム原理主義勢力タリバンがアフガニスタンで行ったような統治ができれば満足なのだ」と、バーニーは言う。「彼ら流の法の支配を徹底できればいい。必要としているのはインフラ整備ではなく、戦闘員と武器だ」
[2015年10月 6日号掲載]