最新記事

米中関係

習近平訪米の狙いは?【習近平 in アメリカ①】

「新型二国間関係」を目指し、友好国として二大大国としての道を歩むべきだ、という中国のご都合主義

2015年9月24日(木)14時46分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

平和大国? ホワイトハウス前で、習近平のチベットやウイグルに対する弾圧に抗議する活動家たち Kevin Lamarque-REUTERS

※【習近平 in アメリカ②】訪米初日、習近平はどう迎えられたか? はこちら
※【習近平 in アメリカ③】まれに見る「不仲」に終わった米中首脳会談 はこちら

 習近平国家主席が9月22日から訪米する。ビジネス界との交流やオバマ大統領との首脳会談のあと、ニューヨークへ行き国連(創設70周年記念)で演説する。中国における報道の内容と過熱ぶりから何が見えるのか?(記事は9月21日時点)

訪米目的に関する中国政府見解

 9月17日、王毅外相は習近平国家主席の訪米に関する政府見解に関して、外交部南ビルにある「藍庁」で各国大使館関係者や記者に対して解説した。ここで声明を出したり解説したりすることを、中国では「藍庁論壇」と呼ぶ。

 王毅外相は、今般の習近平国家主席の訪米を初めての正式訪問であり、また初めての国連総会における演説であると位置づけ、「広大なる太平洋両岸に位置する米中両国」という言葉を用いて「新型大国関係」を示唆した(日本という国がその間にあるのだが、この際、計算には入れないのだろう)。その上で、訪米目的には次の4つがあるとした。

1)「増信釈疑」の旅

「増信釈疑」とは「信頼を増加させ、疑いに関して解釈(釈明)し疑義を晴らす」という意味である。中米の摩擦は双方を傷つけ、全地球に悪影響をもたらすので、摩擦を避ける。中米両国は二大大国として全世界における責任の重大性を認識し、交流を深める。すでに90以上の中米政府間対話および協力機構を構築している。

 中国は戦後秩序の保護者であり、70年前に3500万人の犠牲を払いながら、各国人民とともに反ファシスト戦争を戦いぬいて国連創始国および安全保障常任理事国の一員となった。(筆者注:この中国は「中華民国」で、現在の中国はその中華民国の国民党軍を倒して誕生した国。敵であった中華民国・国民党軍の手柄を、現在の中国の手柄と位置付けている。1971年に現在の中国が中華民国に代わって国連に加盟し、「一つの中国」を主張したが、江沢民の出現により、それまでの中華民国の努力と貢献も、すべて中国のものと置き換えてしまった。)

 米中二大大国がアジア太平洋で大きな役割を果たすことを、この地域の各国が期待している(筆者注:中国の独りよがりだ)。中国は南シナ海問題で勢力を拡大しようなどと思ったことはなく、自国の領土に何かを建設するというのは合法的なことだ。平和と国際秩序の安定のためにやっている。(筆者注:南シナ海問題に関しては、1992年に中国が制定した「領海法」が絡んでおり、4月21日付の本コラム「すべては92年の領海法が分かれ目――中国、南沙諸島で合法性主張」で書いた通りだ。)

2)「聚焦(しゅうしょう)合作(ともに協力する)」の旅

 米中の貿易額は5551億ドルに達し、各種の投資額は1200億ドルに達している。中国企業は全米45の州にわたり投資している。習近平国家主席のこのたびの訪米は米中の新段階に達し、経済貿易分野だけでなくエネルギー、気候、環境保護、金融、農業、防衛、航空、インフラなど多岐にわたる。中米両国が署名すれば、それが全世界に大きな影響を与える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 5
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 6
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中