中国軍事パレードの主たる狙いは「抗日」ではない
米国本土を攻撃できる大陸間弾道弾では、これまでもTEL(Transporter Erector Launcher、輸送起立発射機)に搭載されたDF-31が軍事パレードに参加している。そして、中国は今、新しい大陸間弾道弾の試験を繰り返している。DF-41だ。この新しいミサイルがパレードに参加する可能性もある。
各国の参加、日本で言われるほど冷遇はされていない
しかし、それよりも中国が演出したいのは、各国が参加する「国際観閲式」かもしれない。各国軍にパレードへの参加を呼びかけるのはそのためだ。ファシストに対する勝利を世界が祝う祭典である。中国は、その祭典を主催し、戦勝国の中でも主導的な地位を見せることが出来る。中国の言う、「国際社会における地位の調整 (この場合、「向上」の意味に近い)」である。
日本では、日米を含む多くの西側諸国が、首脳級の出席を見送ったことが話題になっているが、中国外交部副部長は、8月25日、49カ国の元首、政府首脳、高官が軍事パレードに出席すると発表した。同日付の環球網は、中国が9月3日に行う抗日戦勝記念の軍事パレードに招待した51カ国のうち、日本とフィリピンだけが招待に応じなかったと報じている。
欧米諸国の元首と首脳は出席しないが、フランスとイタリアの外相は自国政府代表として出席するとし、欧州連合(EU)加盟国としてはチェコのゼマン大統領が、また、オランダとオーストラリアも閣僚級の政府代表が出席すると報じた。アメリカの参加については、カナダ、ドイツ、EU等とともに、駐中国使節団(大使館員)を以て政府代表とするだろうという報道があった。
西側の首脳級が参加しないことには、もちろん中国は不満だろう。それでも「『外交戦』という形で出席者の肩書きを求めない」と言うのは言い訳がましいが、日本で考えられているほど、国際社会が中国を冷遇した訳でもない。中国としては、首脳でなくとも、元首脳や代表団の参加があれば、その国名を挙げることが出来る。世界の式典であると誇示できるのである。
中国が、国民と国際社会に見せたいのは、国際社会を主導する正当な権利とその能力を有する中国の姿なのだ。
[執筆者]
小原凡司
1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。東京財団研究員