最新記事

中東

イエメン内戦で600万人が飢餓に直面

サウジアラビアの軍事介入以降、民間人の生活環境が急速に悪化している

2015年8月11日(火)17時36分
ルーシー・ウェストコット

窮乏  住居を追われた国内難民の子供たち Khaled Abdullah-REUTERS

 大国も巻き込んだ内戦の陰で、イエメンの生活環境が日を追うごとに悪化している。飢えと病気の増加と、止むことのない爆撃で、多くの民間人が耐えがたい生活を強いられていると、医療・人道援助団体の国境なき医師団は週明けにそう警告した。

 国境なき医師団の緊急対応責任者でイエメンを担当するテレサ・サンクリストバルが会見で語ったところによると、状況が急激に悪化したのは3月26日、サウジアラビアがイスラム教シーア派の反体制武装勢力、フーシ派に空爆を始めてから。サウジアラビアが軍事介入と同時に食料や医薬品、燃料などの禁輸措置がとったことは、ただでさえ最貧国のイエメンにとっては致命的だった。

 市場や学校、120万人におよぶ国内難民のためのキャンプなど、人が集まる場所はどこも、いつ戦場になるかわからない。南部の都市アデンでは、住民は建物屋上にいる狙撃兵に怯えて家から出られず、家族を病院に連れて行くこともできない、とサンクリストバルは言う。

 外国の人道援助団体もイエメンを離れた。フーシ派は年初、イエメンの首都サヌアを制圧したが、その後も戦闘が続いたためだ。

 内戦は、代理戦争の様相を呈している。フーシ派は、同じシーア派のイランから資金や武器、軍事訓練の提供を受けているとみられる。一方の政府軍は、サウジアラビアが率いるイスラム教スンニ派諸国の支援を受けているのだ。この間に、イエメンでは1,700人が死んだ、と国連は推定する。その大半は、空爆の犠牲者だという。

mgwaugust060915-2.jpg

病院で寝かされた栄養失調の赤ちゃん。必要な治療も受けられなかった
Khaled Abdullah-REUTERS

「3月以降、戦闘と暴力がエスカレートしたのは明らかだ」とサンクリストバルは言う。最近イエメンを訪れた時には、一晩に100発の爆弾が降り注いだ。10分に1発の割合だ。サヌアでは、3世代27人の家族のうち2人しか生き延びられなかった悲劇もあったという。

 イギリスの非営利団体「オックスファム」は先月、イエメン国内では600万人以上の市民が餓死の危機に瀕しており、2500人の人口の半分が食料不足に直面していると警告していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中