アサド政権の「樽爆弾」が自国民を虐殺する
シリア和平協議再開に合わせて国際社会にアムネスティが突き付けた「戦争犯罪」報告書
無差別兵器 アレッポ市内の墓地に残された樽爆弾の不発弾を見詰める男性 Mahmoud Hebbo-REUTERS
1年以上前に国連が使用を禁止したにもかかわらず、シリアのアサド政権は北西部の都市アレッポの住民に対し、悪名高いナパーム弾にもなぞらえられる「樽爆弾」による攻撃を続けている──国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが最新の報告書で指摘した。
樽爆弾とは、石油の樽のような燃料容器やガスボンベに金属片、燃料、爆薬などを詰めた爆弾であり、ヘリコプターで上空から落とされる。住宅や病院、学校、市場、礼拝所が爆撃され、住民の命が奪われていると、アムネスティは警鐘を鳴らした。
「アレッポの民間人は想像を絶する残虐行為を受けている。シリア政府の行為は人道に対する罪に当たるケースもある」
報告書によれば、昨年1月から今年3月の間に、アレッポでは樽爆弾攻撃により少なくとも民間人3124人と戦闘員35人が殺された。昨年2月の国連安保理決議で禁止された樽爆弾の使用は、シリア政府による違反行為であるとアムネスティは非難する。
アムネスティは詳細な調査結果をアサド政権に突き付けたが、回答は得られなかったという。
樽爆弾はアレッポの住民が直面する人道危機の一側面にすぎない。報告書によると、彼らは国内の反体制派からも無差別攻撃を受けているという。使用される武器の中には「地獄砲」と呼ばれるガスボンベを付けた手製のロケット砲弾もある。
さらに住民は拉致される恐怖にも怯えている上に、水や食料、医薬品は大幅に不足しており、これ以上ない劣悪な状況に置かれている。「民間人の生活が標的にされてきた」と、報告書の主著者ニコレット・ボーランドは言う。
対シリア武器禁輸を期待
アサド大統領は、国民に対する樽爆弾の使用を否定してきた。2月には英BBCの取材に対し、政府が民間人に無差別の樽爆弾攻撃をしたなどというのは「欧米で繰り返される幼稚な説」だと一蹴。「われわれは樽爆弾なんて持っていない」とまで言ってのけた。