中国主導のAIIB構想とアメリカの手痛い失策
世界銀行とIMF(国際通貨基金)の変革が進まないことへの各国の不満を、アメリカが過小評価していた問題もある。「IMFの穏やかで合理的な改革案をアメリカが実行しないことに途上国は不満を募らせていた。彼らが他の機関に目を向けたのは偶然ではない」と、ルー米財務長官は言う。
現時点ではもはや米政府に好ましい選択肢は残されていない。加盟を拒み続ければ、アジア諸国が前向きに評価している中国主導の試みへの参加を断固拒否する頑固者という印象が強まる。一方、今になってAIIBに参加しても、友好国の協力を得られなかったせいでやむなく方針転換したことは明白だ。
米政府にとって最良の道は、AIIB加盟を見送る一方、同盟国に不参加の圧力をかけるのをやめることかもしれない。米外交問題評議会のエリザベス・エコノミーが言うように「成功するにせよ失敗するにせよ、AIIBに任せておく」のだ。
過去を変えられない以上、アメリカは今回の失策を将来の教訓にするしかない。中国は海路と陸路で現代版シルクロード経済圏を構築する「一帯一路」構想を進めており、アメリカは近い将来、対応を迫られる。アメリカが中国の影響力拡大を懸念するのは当然だが、異を唱える際には同盟国に圧力をかけるよりもましな方法を模索すべきだ。
さらに米政府は、中国主導の構想に自ら加わることも本気で検討すべきだろう。最も重要なのは、「一帯一路」構想を米中双方のメリットになる形に落とし込むことなのだから。
From thediplomat.com
[2015年3月31日号掲載]