ジョージアと呼ばれたいグルジアの気まぐれ
振り回される日本外交
日本の外交は難しい。本来は戦略に基づいてやるべきものだが、他国の名称を変えるのもままならない。外国から賓客をたくさん呼びたくても、こちらの時間と予算に制約される。首相や外相が外国へ行くのも国会審議に縛られて窮屈──というように、手続き上のもろもろのことが日本の「外交」や、日本が相手に与える印象を結構左右してしまう。日本は安倍首相の「地球儀を俯瞰する」戦略にのっとって、ロシアと中近東のはざまにある「戦略的要衝グルジア」に駒を進めようとしているのだろうが、またもや国名変更という「手続き」に振り回されてしまうかもしれない。
外国は変わり身が早い。グルジアもNATO、EU、ロシアの間をふらふらしている気味がある。また「グルジア」にする、いや本来の「サカルトベロ」がいい、と言い出すかもしれない。
いまグルジアに院政を敷いている実業家、イワニシビリ前首相はサーカシビリ前大統領の反ロ路線を批判して権力を握った人物だ。16年に行われる総選挙では、国名をグルジアに戻してプーチンが旗を振る「ユーラシア連合」に入ろうと主張する政党が出てこないとも限らない。
面白い話を紹介しよう。08年8月、CNNはグルジアとロシアの軍事衝突を興奮交じりに伝えていた。「たった今、ロシア軍が『ジョージア』に侵入しました。兵火は......に迫っています」。するとCNN本社(ジョージア州アトランタ)の電話がけたたましく鳴った。地元ジョージア州の老婦人が息せき切って言う。「ロシア兵がジョージアに入ってきたって?! で、どこまで攻めてきているの?」
国や人の名は、むやみに変えるものではない。ひょっとして、日本の民主主義(官僚主義)は、いい防波堤になっているのかもしれない。
[2014年11月 4日号掲載]