船も遠隔操作で動かす時代
海賊のいい「カモ」に?
最終的には船長と乗組員が船を制御して責任を持つという点は変えるべきでない──そう考える人々は抵抗を覚えるだろうと、ベネットは承知している。「海上輸送の遠隔操作の拡大は非常に議論を呼ぶテーマだ。技術の進歩に伴い、議論は今後10年は続くだろう」
現に貨物船の自動化に公然と反対する声も一部で上がっている。世界全体で120万人の雇用が懸かっているからだ。
無人船が突き付ける危険性は失業だけにとどまらない。海賊から狙われる危険性もあると、無人システム関連のコンサルティング会社、UVSコンサルティングのアントワーヌ・マルタンは指摘する。
国際海事局(IMB)海賊監視センターによれば、今年1〜5月に世界全体で報告された海賊行為の件数は累計72件に達した。無人船が普及すれば海賊行為がさらに増えることは容易に想像がつく。
「無人の船なら人質の心配はなくなるだろう」とマルタンは言う。「しかし格好の標的にされる可能性はある。乗組員がおらず、警備隊を警戒したり避けたりする必要もないので、海賊行為がやりやすくなるだろう」
もっとも遠隔操作で操縦できる船を造る技術があるのなら、いっそそれに見合うセキュリティーを備えた船を開発するという手もある。「無人船があれば海賊なんか怖くない──それこそ船全体に電流を走らせればいいんだ。乗組員の心配をする必要はないんだから」と、ベネットは冗談交じりに言う。
むしろ地政学的な部分がテクノロジーに追い付くことをベネットは願っている。「世界中が平和になり、海賊などいなくなればいい」
[2014年8月28日号掲載]