最新記事

海運

船も遠隔操作で動かす時代

2014年10月17日(金)12時25分
マイケル・キャロル

海賊のいい「カモ」に?

 最終的には船長と乗組員が船を制御して責任を持つという点は変えるべきでない──そう考える人々は抵抗を覚えるだろうと、ベネットは承知している。「海上輸送の遠隔操作の拡大は非常に議論を呼ぶテーマだ。技術の進歩に伴い、議論は今後10年は続くだろう」

 現に貨物船の自動化に公然と反対する声も一部で上がっている。世界全体で120万人の雇用が懸かっているからだ。

 無人船が突き付ける危険性は失業だけにとどまらない。海賊から狙われる危険性もあると、無人システム関連のコンサルティング会社、UVSコンサルティングのアントワーヌ・マルタンは指摘する。

 国際海事局(IMB)海賊監視センターによれば、今年1〜5月に世界全体で報告された海賊行為の件数は累計72件に達した。無人船が普及すれば海賊行為がさらに増えることは容易に想像がつく。

「無人の船なら人質の心配はなくなるだろう」とマルタンは言う。「しかし格好の標的にされる可能性はある。乗組員がおらず、警備隊を警戒したり避けたりする必要もないので、海賊行為がやりやすくなるだろう」

 もっとも遠隔操作で操縦できる船を造る技術があるのなら、いっそそれに見合うセキュリティーを備えた船を開発するという手もある。「無人船があれば海賊なんか怖くない──それこそ船全体に電流を走らせればいいんだ。乗組員の心配をする必要はないんだから」と、ベネットは冗談交じりに言う。

 むしろ地政学的な部分がテクノロジーに追い付くことをベネットは願っている。「世界中が平和になり、海賊などいなくなればいい」

[2014年8月28日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中