最新記事

海運

船も遠隔操作で動かす時代

2014年10月17日(金)12時25分
マイケル・キャロル

 無人化によってより効率的な航海が可能になり、乗組員のための居住スペースや設備も不要になれば、最大20%の効率アップにつながるとロールスロイスは期待している。排ガスも20%減少する見込みだ。EU(欧州連合)は過去2年間に350万ユーロを投じて、「情報ネットワーク経由の船舶無人航法(MUNIN)」と称するプロジェクトを立ち上げている。

 プロジェクトの責任者を務めるオルヌルフ・ヤン・ロドセスによれば、「最大の狙いは船のすべての機能のうち、どの程度まで自動化できるかを見極めること」だ。「短期的には、乗員を1人だけに減らして操縦の大部分を陸で行うようにしたい。そしてゆくゆくは、自動化技術によって海難事故がゼロになる日が来るはずだ」

 アメリカでは、米国防総省の防衛先端技術研究計画局(DARPA)が対潜水艦作戦用持続追尾無人艦(ACTUV)を開発中だ。米海軍には既に米テクストロン・システムズ社が開発した、作戦投入可能な無人艇がある。

 軍用であってもメリットはEUのものとそう変わらない。人間が生活するのに不可欠な設備を取り払えば、船体をスリム化できる。コンピューター、GPS、マイクロ波など多くのテクノロジーと同じように、無人船の技術革新も軍用から商用に転用するのはそう難しくはないはずだ。

 ただし今すぐというわけではない。当然、抵抗もあるだろう。現在世界の海を航行中とみられる約10万隻の船の80%を代表する国際的船主団体「国際海運会議所(ICS)」の渉外責任者サイモン・ベネットは、無人船が実験段階を脱するまでにはまだ相当の時間がかかるとみている。

「船が無人で航行できるようになるのは20〜30年ぐらい先だろう」とベネットは言う。「現行の国際法では航行時の最少乗員数が厳密に定められている。乗員数の削減は反発の大きい問題だし、人間はとかくテクノロジーを過信しがちだ。システムがダウンすれば、われわれ人間の昔ながらの航海術だけが頼りなのだが、そのことを忘れずにいられるかどうか」

 ベネットによれば10年後にはeナビゲーションというシステムがスタートする。現在の船舶航行管理システムでは船が岸に近づくと地元の沿岸警備隊から乗員に指示が出るが、それが自動化されるはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ軍、ロシアの攻勢阻止 前線は良好=ゼレン

ワールド

パキスタンとアフガンの和平交渉、着実に進展=中国外

ワールド

ミャンマー大統領に前国軍総司令官、議会が選出

ワールド

EU、財政規律緩和検討も イラン紛争長期化なら=伊
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トランプ関税が米国民に与える「破産」の苦しみ
  • 4
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 5
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 8
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 9
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 10
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中