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人民解放軍「暴走化」の読めない構図

2014年10月10日(金)13時08分
アンキト・パンダ

 だが、奇妙な点が1つある。習の演説の内容が知れ渡っているのはなぜか。習が本気で指揮命令系統に懸念を抱いているなら、なぜ国営メディアでそれを喧伝するのか。メンツを重視するこの国で、指導部の失態が対外的に報道されるのは、どこかおかしい。

 習はこれまでも軍への不満を表明したことがある。だが今回の発言の率直さとそのタイミングを考えれば、これまでとは何かが違う。もしかしたら演説もそれをめぐる報道も外国向けのポーズなのか? 

 インドや東南アジア、東シナ海で中国軍の「暴走」事件が相次いでいる今、軍の行動については知らないふりをすれば、党指導部は責任を免れられるのかもしれない。だが裏を返せば、それは習を「弱い指導者」に見せてしまう。

 中国軍は国家的戦略に従ってトップダウンで動いているのか、それとも勝手に暴走しているのか。どちらであろうと、近隣諸国は安心できない。インドや日本、ベトナム、フィリピン、アメリカの政府や戦略専門家の最大の関心事は、人民解放軍というブラックボックスの解析ではなく、軍事面で挑戦的な傾向を強める中国への対応策だ。

From GlobalPost.com特約

[2014年10月 7日号掲載]

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